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AIが変えるB2Bの未来:すべての企業がeラーニング提供者になる日

作成者: Hiroki Teruya|25/04/30 22:09

AI登場でeラーニング制作の壁が崩壊。NotebookLM等を活用し、B2B企業が持つ独自の「暗黙知」をコンテンツ化・収益化、社内教育や顧客支援を効率化する未来と、そのためのデータ化戦略を考察します。

「AIの登場によって、すべてのB2B企業はeラーニング会社に進化するのではないか?」

最近、強くこのように感じています。eラーニング、つまりオンラインコースやオンラインコンテンツは、これまで専門の事業者が提供するものでした。しかし、AI技術、特に「NotebookLM」のようなツールが普及し始めた今、その状況は大きく変わろうとしています。

このブログ記事は2025年5月1日にポッドキャストで配信した音声をベースに作成しています。ポッドキャストもお聞きください。

 

eラーニング制作の最大の壁「コンテンツ制作」がAIで崩壊

これまで、企業がeラーニングを導入・提供する上で、最も大きな障壁となっていたのは「コンテンツ制作」でした。

  • カリキュラムや構成の考案: 何をどの順番で教えるか、体系立てて考える必要がある。
  • レッスン作成: 各レッスンの内容をテキスト、音声、映像などで作成する手間。
  • 「話す」スキル: セミナー講師などでない限り、人前で分かりやすく話すのは難しい。

これらの課題が、多くの企業にとってeラーニング参入への高いハードルとなっていました。しかし、ChatGPTGemini、Claude、そして私たちが活用しているNotebookLM、さらにはCanvaのようなデザインツールも含め、AIの進化がこの状況を一変させました。

これらのAIツールを活用すれば、専門的なスキルや経験がなくても、比較的容易に質の高いコンテンツ(テキスト、構成案、要約、音声、さらにはFAQやテストまで)を生成できるようになったのです。

差別化の鍵は「社内ノウハウ=暗黙知」のコンテンツ化

AIでコンテンツ制作が容易になったとはいえ、インターネット上に溢れているような一般的なノウハウをまとめただけでは、他社との差別化は困難です。そこで重要になるのが、社内に眠る独自のノウハウ、すなわち「暗黙知」です。

長年の経験の中で培われてきた知恵、成功体験、失敗から得た教訓、独自の業務プロセス、顧客対応のコツ。これらは、その企業ならではの貴重な資産(ナレッジではなくウィズダム)です。

この「暗黙知」を、例えばNotebookLMのようなツールにインプットします。関連する社内文書、過去のレポート、議事録、日報などをデータとして与えることで、AIはそれらを解析し、体系化された理解しやすいコンテンツへと再構築してくれるのです。

なぜ今、B2B企業にとってeラーニングが重要なのか?

B2B(企業間取引)の世界では、営業活動、取引先とのコミュニケーション、自社のサービスやツールの使い方を顧客に学んでもらう場面など、常に「学習」が伴います。従来は、マンツーマンでの説明や分厚いマニュアルの提供が一般的でしたが、これには多大な時間とコストがかかっていました。

AIを活用して自社ノウハウに基づいたeラーニングを構築できれば、以下のようなメリットが生まれます。

  1. 業務効率の大幅な向上: 顧客や取引先、新入社員が必要な情報を自分のペースで学べるため、教える側の時間的負担が激減します。
  2. 教育コストの削減: 集合研修や個別指導にかかるコストを削減できます。
  3. 知識・スキルの標準化: 全員が同じ質の情報にアクセスでき、業務の属人化を防ぎます。
  4. 顧客満足度の向上: オンボーディングやサポートがスムーズになり、顧客体験が向上します。
  5. 新たな収益源: 価値あるノウハウは、有料コンテンツとして販売することも可能です。

成長するeラーニング市場、特にB2B分野の可能性

実際に、eラーニング市場は成長を続けています。矢野経済研究所の調査によると、日本のeラーニング市場規模は以下の通りです。

  • 国内市場全体:
    • 2022年度: 3,705億円
    • 2023年度: 3,690億円
    • 2024年度(見込み): 3,812億円
  • BtoB(法人向け)市場:
    • 2022年度: 1,075億円
    • 2023年度: 1,140億円
    • 2024年度(見込み): 1,232億円

(出典:矢野経済研究所「eラーニング市場に関する調査(2024年)」)

特にBtoB市場は、コロナ禍の特需が落ち着いた後も、企業のDX推進や「リスキリング」(AI時代に対応するための学び直し)の必要性から、堅調な成長が見込まれています。従業員のスキルアップや学び直しは、企業にとって喫緊の課題であり、その解決策としてeラーニングへの注目が高まっているのです。

中小企業での導入も拡大していますが、一方でコンテンツ制作の容易化により、価格競争が激化する側面も指摘されています。

「売る」だけではないeラーニングの活用法

eラーニングは、必ずしも有料コンテンツとして販売する必要はありません。例えば、私たちがWebサイト制作のクライアントに対して行うように、納品後の操作方法や更新手順を解説するeラーニングを無償で提供する、といった活用法もあります。

これにより、納品後の問い合わせを減らし、顧客が自走できるよう支援することで、顧客満足度を高め、長期的な関係構築に繋げることができます。自社のサービスや製品にeラーニングを組み込むことで、これまで手が届かなかったサポート領域をカバーし、付加価値を高めることができるのです。

学習効果を高めるAIの機能:音声、マインドマップ、FAQ、テスト生成

eラーニングの形式として動画は効果的ですが、視聴にはまとまった時間と視覚的な集中が必要です。そこで注目したいのが「音声」コンテンツです。

NotebookLMには、アップロードした資料に基づいて、プロのナレーターが対話形式で解説するような高品質な「音声概要」を生成する機能があります。これを使えば、まるで自社専用のポッドキャストやラジオ番組を作るように、ノウハウを音声コンテンツ化できます。

こちらのポッドキャストで話している男性と女性はNotebookLMの音声概要の機能で作成したものです。人間とAIの区別はもう不可能です。

 

音声であれば、通勤中や作業中など「ながら聞き」での学習が可能です。学習者にとってのハードルが下がり、隙間時間を有効活用できます。

さらにNotebookLMは、学習内容に関する「FAQ(よくある質問)」や理解度を確認するための「テスト」、「マインドマップ」などもワンクリックで生成できます。これにより、知識のインプットだけでなく、整理や定着までを効率的にサポートする学習環境を構築できるのです。

競争力の源泉:「アナログ情報のデータ化」が鍵

AIを活用して社内ノウハウをeラーニング化するために、最も重要かつ最初のステップは、社内に存在する「アナログな情報」や「暗黙知」をいかにしてデータ化するか、という点です。

  • 会議: Google Meetなどのオンライン会議ツールを使えば、録画と同時にリアルタイムでの文字起こしが可能です。
  • 日常会話・対面での打合せ: ICレコーダーや、最近広告でよく見かけるアクセサリー型の録音・文字起こしデバイス(PLAUD NOTEなど)、スマートウォッチの録音機能と連携する文字起こしアプリ(Nottaなど)を活用すれば、対面でのコミュニケーションもデータ化できます。

私たちは毎日の朝礼での「1分間スピーチ」をGoogle Meetで行い、録画と文字起こしデータを蓄積しています。これをNotebookLMに入れることで、社員のスピーチ能力の向上度合いを分析したり、そこから生まれた気づきやアイデアを体系化したりすることを検討しています。

このように、日常業務の中で生まれる会話や議論、アイデアといったアナログ情報を意識的にデータ化し、AIツールに入力していくこと。これにより、これまで個人の頭の中にしかなかった、あるいは文書化されていなかった貴重な知恵や価値観が、構造化・可視化され、再利用可能なコンテンツへと生まれ変わるのです。

まとめ:中小企業こそ、AIとデータ化で未来を切り拓く

これからの時代、特にリソースの限られる中小企業にとって、いかにして社内のアナログ情報をデータ化し、AIを活用して価値あるコンテンツ(eラーニング)に変換できるかが、競争力を高めるための重要な鍵となります。

データ化というと、キーボードで必死に入力するイメージがあるかもしれませんが、「音声」を活用すれば、もっと手軽に、効率的に情報をデータとして蓄積できます。

AIは、もはや一部の先進的な企業だけのものではありません。NotebookLMのようなツールを使いこなし、自社ならではの「暗黙知」という宝の山を掘り起こし、eラーニングという形で磨き上げる。そうすることで、業務効率化、人材育成、顧客満足度向上、そして新たな収益機会の創出といった、明るい未来を切り拓くことができるはずです。

まずは、身近な会議や会話から「データ化」を始めてみてはいかがでしょうか。

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