AIがゲームをわずか数分で作り上げる時代。本当に必要なスキルはプログラミングなのでしょうか? Salesforceの幹部が語る「共感力」の重要性とは。これからの働き方、子供たちの教育、そして人間らしい豊かな人生を送るためのヒントを、AIとの共存時代を生きる私たち自身の体験から探ります。
この記事は2025年6月4日に ポッドキャストにて配信した音声を元に作成しています。 Podcast も合わせてお聞きください。
「ねぇ、テトリス作って!」
夕食後、くつろいでいた私はスマートフォンの音声入力に話しかけました。相手はAIアシスタントのClaude 4.0。すると驚くことに、ものの数分でスマートフォン上で実際に遊べるテトリスが完成したのです。
ブロックの回転、左右移動、落下スピードアップといった操作も、画面上のボタンでしっかり実装されていました。

これにはゲーム好きの長男も「本当にゲームだ!」と目を丸くし、小学3年生の長女も「私もやりたい!」と大興奮。次に「まるばつゲーム作って」と音声で指示させると、あっという間にまるばつゲームが出現。

さらに「二人で対戦できる簡単なゲーム」とお願いすれば、画面が二分割され、ランダムに表示される丸を5秒以内にタップする早押しゲームまで作ってくれました。

この体験は、私に大きな衝撃と気づきを与えました。これまでゲームは「買って楽しむもの」でしたが、これからは「作って楽しむもの」に変わるのかもしれない。
それも、小学生ですらAIの力を借りれば簡単に。これはゲームに限りません。試しに「宇宙ステーションから見た地球と月の現在時刻に合わせた周期シミュレーションを作って」と指示したら、それすら実現してしまったのですから。

AIが高度なスキルを民主化する時代。私たちは何を目指し、何を大切にすべきなのでしょうか?
スキル神話の終焉? AIが塗り替える「本当に価値ある能力」
かつて、何かを作り出すためには専門知識やスキルが不可欠でした。プログラミングを学ぶために分厚い本を読破したり、専門学校やオンラインスクールに通ったり、何年もかけて一人前になるのが当たり前。しかし、AIの進化はその常識を覆しつつあります。
私の体験のように、スマートフォンに話しかけるだけで複雑なプログラムが生成される。つまり、アイデアさえあれば、高度な技術スキルがなくても形にできる時代が到来したのです。この事実に、「今まで必死に磨いてきたスキルは無意味になるのだろうか…」と不安を感じる方もいるかもしれません。
実際、私の小学3年生の長女は、私が「お父さんが作ったゲームだよ」と自慢すると、「AIが作ったんでしょ?」と冷静に指摘しました。まさにその通り。重要なのは、AIを「使う」ことであり、その先にある「何をしたいか」「何を作るか」というアイデアなのです。
Salesforce幹部が警鐘!「コーディングより共感力が重要」な理由
そんなことを考えていた矢先、興味深いニュースを目にしました。ビジネスインサイダーの記事で、Salesforceのチーフ・フューチャー・オフィサーであるピーター・シュワルツ氏が「AI時代に最も重要なスキルはコーディングではない」と語っていたのです。
シュワルツ氏は、「親から『子供に何を学ばせるべきか、コーディングができないと困るのでは?』と聞かれれば、私は『他の人と一緒に働く方法を学習すべきだ』と答える」と述べています。そして、AI時代に最も必要なのは「共感力」だと断言しているのです。
テクノロジーが進化し、高度な作業をAIが担うようになればなるほど、人間ならではの能力が際立ってきます。それが、他者の感情や立場を理解し、寄り添う「共感力」であり、多様な人々と協力して新しい価値を生み出す「協調性」なのです。
「共感力」とは何か? AI時代を生き抜くための人間らしさの探求
では、その「共感力」とは具体的にどのようなものでしょうか?
それは、相手の喜びや悲しみを自分のことのように感じ、言葉にならない思いを汲み取ろうとする姿勢。自分の弱さを認め、相手の弱さを受け入れる寛容さ。そして、共に笑い、共に涙するような、人間同士の感情の交感です。
振り返れば、私たちはいつの間にか「正解」を求める教育や、効率性を重視する社会の中で、こうした人間らしい感情の機微を置き去りにしてきたのかもしれません。戦後の大量生産型の社会システムの中で、個人の感情や特性よりも、画一的な知識やスキルが優先される風潮が強まったことは否めません。
しかし、時代は変わりました。AIが論理的な思考やパターンの分析を得意とするなら、人間は感情や直感、そして何よりも「なぜそうしたいのか」という情熱や好奇心を大切にすべきです。
子供たちに対しても、テストの点数や特定のスキルを追い求めるだけでなく、多様な価値観に触れさせ、人と関わる中で心を育む機会を提供することが、これからの時代を生き抜く力を養う上で不可欠ではないでしょうか。
「共感力」を測る明確な指標はないかもしれません。しかし、相手の言葉に真摯に耳を傾け、その背景にある感情や思いを想像する。そして、自分の考えや感情を素直に表現し、建設的な対話を試みる。そうした日々の積み重ねが、人間関係を豊かにし、結果としてAIには代替できない価値を生み出すのです。
AIは敵か味方か? 業務効率化がもたらす働き方の未来図
AIの進化は、私たちの働き方にも大きな変革をもたらします。
例えば、私が日常的に活用しているAI搭載イヤホン「ZenCode One」は、会話をリアルタイムで文字起こしし、クラウドに保存してくれます。これにより、従来は手間と時間がかかっていた会議の議事録作成業務から解放されました。
考えてみてください。もし、あなたの職場で未だに手書きやパソコンでの手入力で議事録を作成し、それに何時間も費やしているとしたら、それはAIを使えば数分で完了する作業かもしれません。
あるいは、何時間も議論しても結論が出ない会議も、AIに論点を整理させたり、多様な視点から意見を出させたりすることで、わずか数分で解決の糸口が見つかる可能性だってあります。
重要なのは、AIに「どう思う?」と問いかけられたとき、「うーん…」と言葉に詰まるのではなく、「私はこう思う。なぜなら…だからだ。これを試したら面白いんじゃないか?」と、自分の意見を明確に述べられるかどうかです。
思考停止に陥らず、AIを思考の壁打ち相手として活用し、より本質的な議論や創造的な活動に時間を使う。それが、これからの会議や仕事のあり方ではないでしょうか。
Webデザイナーの未来は安泰? 仕事の本質は「コミュニケーションデザイン」へ
先日、私の会社のWebデザイナーから「Webデザインの仕事はなくなるのではないか」と不安を打ち明けられました。私は「なくならない」と断言しました。
確かに、AIを使えば美しいWebサイトを短時間で作れるようになるでしょう。単に「ホームページを作れます」というスキルだけでは、いずれAIに代替されるかもしれません。
しかし、仕事の本質は「困っている人を助けること」です。そして、Webデザインにおける本質的な価値は、「コミュニケーションをデザインする」ことにあると私は考えます。
クライアントが本当に伝えたいことは何か? ターゲットユーザーは何を求めているのか? その「思い」を汲み取り、最適な形で表現し、人と人、人と情報、人とサービスを繋ぐ。
それは、深い洞察力と共感力、そして対話を通じてしか生まれません。AIは優れたツールですが、クライアントの隠れた魅力や情熱を引き出し、それをデザインに昇華させるのは、やはり人間の役割です。
AIと壁打ちをすることはあっても、最終的に共感を求め、心を動かされるのは、生身の人間とのインタラクションではないでしょうか。
人は人でしか成長できず、人でしか変わることができない。そこにこそ、これからの人間の価値が凝縮されていくのだと思います。
結論:AI時代こそ「人間らしさ」で輝く! 今日からできる共感力を育む一歩
AIが日常に溶け込み、私たちの生活や仕事を劇的に変えようとしている今、私たちは変化を恐れるのではなく、むしろそれを楽しむくらいの気概を持ちたいものです。
古い価値観や成功体験に囚われず、子供の頃のような好奇心で新しい技術に触れ、それをどう活かせるかを考える。
かつて教え込まれた「正解」に縛られていませんか? あなたの思考パターンは、もしかしたら過去の誰かが作った教科書的なマインドセットに過ぎないのかもしれません。私自身も、常にその呪縛と戦っています。
しかし、これからの時代に「絶対的な正解」などありません。むしろ、自分自身が信じたこと、行動したことを「正解にしていく」という主体性が求められます。
AIがテトリスを数秒で作ってくれる時代だからこそ、私たちは泣いたり、笑ったり、時には怒ったり、悲しんだりしながら、人と深く関わり、共感力を磨いていく。それが、AIには決して真似できない、人間ならではの強みとなり、未来を切り拓く力となるはずです。
あなたはこの変化の時代をどう捉え、何に価値を見出しますか? まずは、身近な人との対話から、そのヒントを見つけてみてはいかがでしょうか。