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「うちのチーム、アイデア出ないな…」と悩むあなたへ。未来の管理職は“畑を耕す農家”になる

Hiroki Teruya By Hiroki Teruya
「うちのチーム、アイデア出ないな…」と悩むあなたへ。未来の管理職は“畑を耕す農家”になる

 

「よし、今週もすべてのタスクが計画通りに進んでいる」

整然と更新された進捗管理シートを眺めながら、あなたはホッと胸をなでおろす。チームの調和を保ち、決められた業務を滞りなく、効率的に回すこと。それがあなたの得意なことであり、マネージャーとしての価値だと信じてきた。

しかし最近、その自信が静かに揺らいでいませんか?

経営陣は「イノベーションを」「新しい価値を」と繰り返す。隣の部署では、AIツールを駆使した新しいプロジェクトが立ち上がり、注目を集めている。それに比べて、自分のチームはどうか。日々の業務は完璧にこなせている。でも、新しいアイデアや、常識を疑うような声が上がる気配は、正直、ない。

「安定は得意だけど、革新は苦手…」

「このままでは、時代に取り残されてしまうのではないか?」

そんな焦りを感じながらも、「さあ、自由にアイデアを出せ!」と号令をかけるだけでは、何も変わらないことをあなたは知っている。秩序を愛するあなたにとって、予測不能な「イノベーション」は、どこか恐ろしいものにすら感じられる。

もし、あなたがそうだとしたら。

今日、あなたにお伝えしたいのは、イノベーションは「ひらめき」や「才能」の問題ではなく、「土壌」の問題である、ということです。

そして、これからのマネージャーの最も重要な仕事は、管理することではなく、その土壌、すなわち「文化」を育む“農家”になることなのです。

ポッドキャストもお聴きください。

 

なぜ、あなたの完璧な「工場」からはイノベーションが生まれないのか

 

これまでの優秀なマネージャーは、いわば「工場の工場長」でした。

製品(成果物)の品質を担保し、決められた納期とコストの中で、いかに生産ラインを効率よく、ミスなく稼働させるか。そのための管理手法を、私たちは必死に学んできました。

あなたの作る完璧な進捗管理シートや、詳細な業務マニュアルは、まさにこの工場モデルの象徴です。それは、安定した品質の製品を、計画通りに生み出すためには、非常に有効なアプローチでした。

しかし、時代は変わりました。

AIという、史上最も勤勉で正確な「工場長」が登場したのです。

進捗の管理、データ分析、レポート作成といった「ラインを管理する」仕事は、どんどんAIに代替されていきます。

そして、この完璧に管理された工場からは、残念ながら「規格外の製品」、すなわちイノベーションは生まれません。なぜなら、イノベーションの種は、少しの「無駄」や「逸脱」、「遊び心」の中に宿るからです。

ラインから外れた行動を「ミス」として修正し、効率を最優先する工場では、その小さな種は、芽を出す前に摘み取られてしまうのです。

「管理」を突き詰めれば突き詰めるほど、チームは「革新」から遠ざかっていく。この残酷なジレンマこそが、あなたを悩ませる問題の正体です。

では、どうすればいいのでしょうか。

工場を閉鎖し、すべてをカオスに委ねるべきなのでしょうか?

いいえ、違います。

あなたが目指すべきは、工場ではなく「畑」を作ることなのです。

 

あなたの新しい仕事は「イノベーションが育つ畑を耕す農家」になること

 

想像してみてください。優秀な農家は、作物を無理やり引っ張って成長させることはしません。

彼らがするのは、太陽の光が降り注ぎ、水はけが良く、栄養がたっぷり含まれた「ふかふかの土壌」を用意することです。良い畑さえあれば、種は自然に芽吹き、勝手に力強く育っていくことを知っているからです。

これからのマネージャーの最も重要な仕事は、この「畑を耕す」営みそのものです。

イノベーションが自然に生まれてしまうような、豊かな「組織文化」という名の畑を耕すこと。これこそが、AIには決して真似できない、人間にしかできない、あなたの新しいミッションです。

管理をやめ、農家になる。

それは、コントロールを手放すことではありません。コントロールの「対象」を変えることなのです。個々のタスクや部下の行動を管理するのではなく、彼らが育つ「環境」をデザインすることに、あなたの情熱と能力を注ぐのです。

 

良い畑を耕すための、2つの具体的ステップ

 

「農家になれ、と言われても、具体的に何をすればいい?」

ご安心ください。良い畑を耕す方法は、決して突飛なものではありません。むしろ、非常に人間的で、あなたも明日から実践できることです。

ステップ1:土をふかふかにする「心理的安全性」

どんなに良い種(アイデア)も、カチカチに固まった土壌では根を張ることができません。

「こんなことを言ったら、馬鹿にされるかもしれない」

「もし失敗したら、評価が下がってしまう」

そうした不安という名の石ころだらけの畑では、イノベーションの芽は絶対に出てきません。

土をふかふかにする最初の仕事は、この石ころを取り除き、「何を言っても大丈夫」「挑戦した上での失敗は歓迎される」という安心感、すなわち「心理的安全性」を育むことです。

そのために、まずあなたがやるべきこと。

それは、率先して、あなた自身の「失敗談」を話すことです。

「昔、こんな思い込みで大失敗しちゃってさ…」

完璧な上司ではなく、弱さや失敗を見せられる上司の姿は、部下に「この人の前では、自分も完璧でなくてもいいんだ」という安心感を与えます。

挑戦を称賛し、失敗から学ぶ姿勢をチームの共通言語にすること。

これが、農家としてのあなたの最初の仕事です。

ステップ2:種をまく「問い」の力

土壌が整ったら、次はいよいよ種まきです。

イノベーションの種、それは「問い」です。

AIは、与えられた問いに対して最適な答えを出すのは得意です。

「どうすれば、売上を10%伸ばせるか?」という「HOW(どうやるか)」の問いには、AIが過去の膨大なデータから最適解を提示してくれるでしょう。

しかし、AIにはできないことがあります。

それは、「そもそも、なぜお客様は私たちから商品を買ってくれるのだろう?」「私たちの仕事が、社会をどう良くしているのだろう?」といった、ビジネスの根源を問う「WHY(なぜやるか)」の問いを立てることです。

あなたの新しい役割は、部下にHOWを指示することではありません。

チームメンバーが思わず考え込んでしまうような、本質的で、ワクワクするような「WHY」を投げかけることです。

沖縄では、飲み会のシメにステーキを食べる文化があると言われています。

「どうすれば、もっとシメのステーキを売れるか?」これはHOWの問いです。

しかし、本当にそうでしょうか?

「そもそも、沖縄の人は本当にシメにステーキを求めているのか?ひょっとしたら、本当はヤギ汁を求めている地域もあるのではないか?」

これは、常識を疑うWHYの問いです。

このような「問い」こそが、新しい市場やサービスを生み出すイノベーションの種になります。

日々の会議の中で、「そもそも、なぜだっけ?」と問いかける時間を作ること。

それが、あなたの畑にたくさんの種をまくことに繋がるのです。

 

「管理」を手放し、「育成」を始めよう

 

AI時代の到来は、あなたのような真面目で、秩序を重んじるマネージャーにとって、決して脅威ではありません。

むしろ、これまで「管理」という名の、本来人間がやらなくてもよかったはずの仕事から解放され、人間にしかできない、最も価値ある仕事に集中できるチャンスなのです。

その仕事とは、チームという畑を耕し、メンバーの才能が開花する環境を整え、イノベーションという名の作物が、自然に、豊かに実るのを辛抱強く見守ることです。

あなたは、カオスを生み出す革命家になる必要はありません。

あなたが本来持っている、細やかな気配りや、物事を丁寧に整える力を、これからは「人」と「文化」を育むために使ってください。

あなたの価値は、完璧な工場を管理することではありません。

生命力あふれる豊かな畑を作り上げることで、測られるようになります。

スプレッドシートを一度閉じて、チームの畑に目を向けてみませんか?

そこには、あなたの手入れを待っている、無限の可能性の種が眠っているはずです。

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