これからの時代に必要な「人間だけの価値」。それは「ノンフィクションの物語」です。あなたの経験を力に変えるヒントを共有します。
最近、AIの進化には本当に驚かされることばかりです。僕も仕事柄、ChatGPTのような新しいツールに触れる機会が多く、その能力には目を見張るものがあります。先日も音声入力だけで、うるま市の観光ポスター案をAIが数分で作ってくれたりして、「これはすごい時代になったな」と実感しました。
便利になる一方で、「人間の仕事はなくなるんじゃないか?」「自分たちの価値って何だろう?」そんな声もよく耳にしますし、僕自身も考えずにはいられません。効率化が進む中で、私たちはどこに向かうのか?
そんなことを考えていた矢先、先日、浦添市倫理法人会の経営者モーニングセミナーで、稲嶺惠一さんのお話を伺う機会がありました。御年91歳にして、階段もご自身で登られ、スピーチも滑舌良く、ダンディーな佇まい。ご自身の経験を熱く語られる姿。8時間もの大手術を乗り越えられたと伺い、その言葉一つ一つに、AIには決して真似のできない、人間の持つ生命力、そして「物語」の力を感じずにはいられませんでした。
稲嶺さんの「我以外皆師」という言葉も、まさに経験から生まれた知恵ですよね。この出会いを通して、僕はAI時代だからこそ、私たちが大切にすべきものがより明確になった気がしています。
僕が思う、AIと人間の決定的な違い。それは「喜怒哀楽」の感情と、それに伴う「リアルな体験」です。
AIは感動的な文章を書けるかもしれません。しかし、それはあくまでデータに基づいたシミュレーション。満員電車で感じるストレス、目標を達成した時の込み上げる喜び、大切な人を失う悲しみ、理不尽な出来事への怒り… こうした生々しい感情の起伏は、実際に体験した者にしか分かりません。
僕たちは日々、様々な感情を味わいながら生きています。嬉しいこと、楽しいことだけでなく、辛いこと、悲しいこと、悔しいこと、どうしようもない葛藤。これら全てが、僕らを「人間」たらしめている、かけがえのない要素だと思うんです。
「あの人、ロボットみたいだね」と言われる時って、たいてい感情が見えない時ですよね。逆に言えば、感情豊かであること、そしてそれを生み出す体験をしていることこそが、僕らの強みなのです。
少し、僕自身の話をさせてください。僕が東京での会社員生活を経て、ここ沖縄で起業した背景にも、やはり個人的な「物語」があります。
当時、3人目の子供がお腹にいるタイミングで、沖縄にいる母が脳腫瘍だと知らされました。元気だった母の変化に戸惑い、東京にいながら何もできない自分に葛藤しました。「今すぐ帰るべきか?」「仕事は?家族は?」と。
最終的に沖縄へ戻り、母を看取る中で、「自分は親に何ができたか?」「最後にできることは何か?」と考え抜いた末、「母の子育ては間違っていなかったと証明しよう」と決意しました。それが、今の会社を立ち上げた原点です。
この経験は、僕にとって決して楽なものではありませんでしたが、間違いなく今の僕を形作る重要な「ノンフィクションの物語」の一部です。そして、この経験があったからこそ伝えられる想いがあると信じています。
独立の背景はこちらのnoteでもご紹介しています。
僕がセミナーなどで自己紹介をする際、この個人的な体験をお話しするのは、単なる身の上話ではありません。僕という人間が、どんな価値観を持ち、何を原動力にしているのか。それを伝えることで、聞いてくださる方との間に「共感」が生まれ、より深い繋がりができると感じているからです。
特別な成功体験だけが物語ではありません。むしろ、苦労や失敗、葛藤の中にこそ、人の心を打つリアルなドラマが宿るのではないでしょうか。
AIが情報を大量生産できる時代、私たちは無数の情報に囲まれています。そんな中で、何が人の心を掴み、記憶に残るのか?
それは、やはり「誰が」語るか、その背景にある「物語」だと僕は思います。
人はスペックや機能だけでなく、「共感」で繋がります。 「この人の想いに共感するから、応援したい」 「この会社の背景にあるストーリーを知って、ファンになった」 そんな経験、あなたにもありませんか?
これは、マーケティングやブランディングの世界でも同じです。製品の性能を語るだけでなく、開発に込められた想い、創業時の苦労話、お客様とのエピソードといった「ノンフィクションの物語」を発信すること。それが、情報に埋もれない、独自の価値となり、顧客との強い絆を築く鍵になります。
AIが生成した「それらしい文章」にはない、体温の通った、正直な物語。それこそが、これからの時代にますます求められる、人間ならではのコミュニケーションだと僕は考えます。
「自分の経験をどう語ればいいか分からない」という方もいるかもしれません。難しく考える必要はありませんが、物語作りの「型」を知っておくと、考えを整理しやすくなります。Podcastでも触れましたが、例えばこんなフレームワークがあります。
これらはあくまで道具です。一番大切なのは、あなた自身の言葉で、正直な気持ちを込めて語ること。上手くなくても、格好悪くてもいいんです。
もし今、あなたが何か困難な状況にいたり、壁にぶつかっていたりするなら、それはまさに「物語」の最もドラマチックな部分、「第2幕:対立」の真っ只中にいるのかもしれません。
その経験は、数年後、必ずあなたの、そして誰かの糧になるはずです。「この経験も、未来の自分や誰かを勇気づけるための『物語』なんだ」そう捉えてみると、少しだけ、今の状況を客観的に、そして前向きに見ることができるかもしれません。
AIは素晴らしいツールです。僕も積極的に活用しています。しかし、AIが進化すればするほど、僕たち人間が持つ「喜怒哀楽」の感情と、そこから生まれるリアルな「ノンフィクションの物語」の価値は、相対的に高まっていくと確信しています。
あなたの人生にも、必ず語るべき物語があります。 ぜひ、ご自身の経験を振り返り、そのかけがえのない物語を、少しずつでいいので、誰かに伝えてみませんか?
それはきっと、あなた自身の価値を再発見し、新しい繋がりを生み出す、素晴らしい一歩になるはずです。
この記事は2025年4月18日に Podcast にて配信した音声をベースに作成しています。 Podcast も合わせてお聞きください。