こんにちは、照屋です。今日のポッドキャストでは、先日行ったAI経営戦略セミナーの内容を振り返りつつ、AIを使った経営手法についてお話ししていきたいと思います。
特に、生成AIがどのように企業経営を変革するのか、またその実践方法について詳しく掘り下げていきます。
AIが経営にどのようなインパクトを与え、具体的にどう使うべきかを理解することで、皆さんのビジネスに役立てていただければと思います。
この記事は2024年10月12日にポッドキャストにて配信した音声をベースに作成しています。 Podcast は2本立てとなっておりますので 合わせてお聞きください。
前編
後編
まず、AIがどれほどの規模で成長しているか、数字で確認してみましょう。総務省の白書によれば、世界のAI市場は2032年までに急速な成長を遂げると予測されています。
近年、AIの社会実装が急速に進む中、文章、画像、音声、動画などのコンテンツをAIが自動生成する「生成AI」が大きな注目を集めています。
世界の生成AI市場は、2023年には670億ドル規模でしたが、2032年には1兆3,040億ドルにまで成長すると予測されており、その拡大スピードは驚異的です。この背景には、GoogleのGeminiやOpenAIのChatGPT、AnthropicのClaude、Midjourneyなどの生成AIツールが爆発的に普及していることが挙げられます。
生成AIの魅力は、単に文章を作るだけに留まらず、画像、音声、動画など多岐にわたるコンテンツを生成できる点にあります。これにより、マーケティングやセールス、カスタマーサポート、データ分析、さらには教育分野や小説執筆、法律など、さまざまな領域での応用が進んでいます。
また、プログラムやデザインの自動生成も可能となり、人手不足の解消や生産性向上を目指す企業にとっては、非常に有効なツールとなっています。
生成AIの利用に関するグローバルな視点から見た場合、日本は他国と比べて大きく遅れているという現実が浮き彫りになっています。このグラフは、日本、アメリカ、中国、ドイツ、イギリスの5カ国を対象に、生成AIの利用経験を調査したものです。
まず、日本の利用率はわずか9.1%で、圧倒的多数の90.9%の人が生成AIを「使ったことがない」と回答しています。この数値は、アメリカや中国と比較して顕著に低く、特に中国では56.3%が生成AIを既に利用していると答えており、日本との差は大きいです。
**米国では46.3%**の利用率を示しており、これは技術的なインフラの整備やAI関連サービスの普及が早かったためと考えられます。アメリカはテクノロジー先進国として、生成AIの導入が幅広く進んでおり、企業や個人レベルでも活用されています。特にGoogleのGeminiやOpenAIのChatGPTなど、米国発の生成AIツールがその普及を後押ししているのは明らかです。
**中国の利用率は56.3%**と最も高く、中国がAI技術の開発と導入に積極的であることが分かります。中国政府はAI技術の発展を国家戦略の一環として推進しており、この積極的な取り組みが生成AIの利用拡大に貢献しています。また、中国国内のテクノロジー企業が生成AI技術を迅速に導入し、各産業での活用が進んでいることも背景にあります。
ドイツとイギリスでは、利用率がそれぞれ34.6%と39.8%で、どちらもアメリカと中国に比べると低めですが、日本を大きく上回っています。ヨーロッパでは、データ保護やプライバシーの問題が大きく取り上げられており、これが一部で生成AIの普及に影響を与えていると考えられますが、それでも企業や産業での利用は着実に進んでいます。
このデータから明らかになるのは、日本が生成AIの導入に関して消極的であるという現状です。その背景には「使い方がわからない」「自分に必要ない」といった理由があるとされていますが、これはマーケティングや教育の観点から見ると、情報提供不足や活用方法の周知が進んでいないためと考えられます。
今後、日本がこの差を埋めるためには、生成AIの利便性を企業や個人にもっと広く伝える必要があります。また、使い方を学ぶ機会を増やすことで、AIの導入が進むことが期待されます。特に中小企業においては、生成AIを取り入れることで効率化やコスト削減が実現し、競争力の強化につながる可能性が高いです。
このように、生成AIは今後ますます幅広い分野で利用が拡大し、経済や社会に大きな影響を与えることが予想されます。日本もこの波に乗り遅れないよう、積極的に生成AIの活用を推進していくことが重要です。
それでは、「AI経営」とは具体的にどういうことなのでしょうか?AI経営とは、AIを活用してデータ分析や業務の自動化を行い、経営戦略や意思決定を最適化する経営手法です。
従来の経営リソースとして知られる「人物金情報」に加えて、AI技術とデータが新たなリソースとして組み込まれます。この新しいリソースを活用することで、企業の競争力を大幅に向上させることが可能になります。
例えば、「人」のリソースに関しては、AIによって自動化できる業務を減らし、社員がより戦略的で創造的な仕事に集中できるようにすることが重要です。これにはリスキリング(再教育)が必要であり、AIに置き換えられる業務から解放されることで、人材が新しいスキルを身に付ける機会を得るわけです。
次に、「物」に関しては、AIインフラの整備が求められます。クラウドサービスやデータサーバーなど、AIを活用するためのインフラを構築し、紙ベースの業務をデジタルに移行することが必要です。例えば、紙で書類を管理している企業では、AI導入が難しくなるため、まずはデジタル化を進めることが必要です。
「金」に関しても、AI導入には初期投資が必要ですが、これは大手企業だけでなく、中小企業でも手が届くレベルです。具体的には、月額1万円から10万円程度で、クラウドツールを利用して業務の自動化を進めることができます。この投資は長期的な利益を見込んで行うべきであり、今後AIにかかるコストは急速に下がることが予想されます。
「情報」に関しては、AIによるデータ分析が非常に重要な役割を果たします。市場トレンドや顧客の動向をリアルタイムで分析し、迅速かつ正確な意思決定が可能となります。
AI経営は、導入の深さに応じていくつかのレベルに分類されます。自社の現在の状態を把握し、次のステップに進むためのガイドとして以下のレベルを参照してください。
レベル1:AI未導入 これは、まだAIを導入していない伝統的な経営手法です。FAXや紙ベースの書類管理が中心で、デジタル化も進んでいません。
レベル2:AI初期導入 部分的にAIを導入して業務の自動化が進んでいる段階です。データ分析ツールなどを使って、限定的な業務プロセスの最適化が行われています。
レベル3:部分的AI活用 複数の部門でAIを活用し、データに基づく意思決定が進められています。例えば、マーケティングや在庫管理にAIを利用して効率化を図っています。
レベル4:全社AI経営 全社的にAIが導入され、ほとんどのプロセスがAIによって最適化されています。AIは経営の中核を担い、業務の大部分が自動化されています。
レベル5:完全AI経営 AIが全社の意思決定をほぼすべて自動で行い、経営の全プロセスを最適化しています。この段階では、AIが新製品開発や革新の推進役を果たします。
では、AI経営を実践するために、具体的にどうすればいいのかを見ていきましょう。企業の業務を大きく「集客」「販売」「管理」の3つに分け、それぞれにAIを活用する方法を解説します。
マーケティングとAIの相性は抜群です。例えば、ウェブサイトのコンテンツ生成やSEO対策にAIを使うことで、効率的に集客を図ることができます。私の会社では、毎日5分間の音声入力をもとにブログ記事やポッドキャストのコンテンツを生成し、短時間で大量のコンテンツを作成しています。AIを使うことで、これまで人手に頼っていた作業を大幅に効率化できるのです。
AIは営業活動にも大きな影響を与えます。Zoom商談やメール作成にAIを取り入れ、自動で商談を行うことが可能です。例えば、AIアバターが営業を代行し、私の分身のように振る舞うことで、複数の商談を同時にこなすことができます。
経理業務や顧客管理もAIで効率化が可能です。例えば、私たちの会社では「HubSpot CRM」を利用して、AIによるタスク管理や顧客フォローを行っています。これにより、手作業で行っていた管理業務を大幅に自動化できました。
AIの進化は著しく、これから2〜3年以内に「汎用人工知能(AGI)」が実現すると予測されています。さらに、その10年後には「超知性(ASI)」が出現し、私たちの生活や仕事が大きく変わると言われています。ソフトバンクの孫正義氏は、AIが次の産業革命を引き起こすと述べており、既存の仕事や産業構造が劇的に変わることは避けられないでしょう。
AI経営を取り入れることで、企業の競争力を高め、効率を劇的に向上させることができます。特に中小企業は、大企業に比べて柔軟性が高く、AIを使った経営改革を迅速に進めることが可能です。今からAIを取り入れることで、1年後、3年後には大きな成果を上げられるでしょう。
「まだAIを使う準備ができていない」と感じている企業も多いかもしれませんが、まずは小さなステップから始めてみましょう。試行錯誤しながら、AIを経営に取り入れることで、未来の競争力を築いていくことができるのです。
このポッドキャストを通じて、AI経営の基本から実践までをお伝えしました。自社の経営にどのようにAIを取り入れるべきか、ぜひこの機会に考えてみてください。