ブランド価値を高める最強の接点とは?
海外のツールやサービスを使っていて、問い合わせ先がわからずに困った経験はありませんか?解約ページが見つからない、不具合が発生したけれど問い合わせ先が見当たらない、電話で直接話したいのに電話番号が載っていない…。そんな状況でイライラした経験は誰にでもあるのではないでしょうか。
実はこのような場面こそ、ブランド体験を創出する最高の機会なのです。普段、私たちはツールを通してしかお客様とつながっていませんが、ヘルプサポートの体験をする時は、お客様の声を直接聞ける絶好の機会であり、口コミを発生させる最高のストーリーを作る場面なのです。
この記事は2025年3月14日に Podcast にて配信した音声をベースに作成しています。 ポッドキャストでは音声による解説をしていますので 合わせてお聞きください。
ブランド体験とストーリーの重要性
人は見たり聞いたりするよりも、自分で体験したことの方が記憶に残ります。そして、自分が体験したことは誰かに話したくなるものです。ここでファンが生まれ、ブランドが構築されていくのです。
ブランドエクイティの父と呼ばれる、「ブランドは資産だ」という考え方を広めたデビッド・アーカーさんは、ブランド体験を「ブランドとあらゆる接点を通じてお客様が考える感覚、感情、思考、行動の総和」と定義しています。単に製品やサービスを利用するだけでなく、ブランドの持つ世界観や顧客とのコミュニケーションなど、あらゆる要素がブランド体験を構成するのです。
2019年に出版された『シグネチャーストーリーが人々を引きつける』という本でアーカーさんは、「これからはストーリーが大事だ」と強調しています。では、このストーリーはどこで体験するのか?それは、顧客が実際に困った時のヘルプサポートの場面です。
実例:Wixカスタマーケアの素晴らしさ
この体験を日々実感しているのが、Wixのカスタマーケアサービスです。彼らには「コールバック」という電話サポートがあります。おそらくエンドユーザーには提供されていないサービスですが、Wixのパートナーとして最高ランクのレジェンドになると、このサポートを優先的に受けることができます。
ほぼ毎日、30分くらい話すこともあり、難しい案件も多いため、頻繁にコールバックを利用しています。対応してくれるスタッフの方も私たちのことを覚えてくれているようです。
Wixカスタマーケアの優れた点
Wixのカスタマーケアスタッフは非常に優秀です。例えば、WixStudioの「リピーター機能」についての相談では、「おすすめ」というタグを表示させる方法について、画像を使った解決策を提案してくれました。
このやり取りの素晴らしい点は、以下の通りです。
- すべて電話で完結する - ZOOMなどの画面共有ではなく、電話だけでコミュニケーションを取る
- 同じエディター画面を共有 - 顧客と同じ画面を見ながら問題解決に取り組む
- 徹底的なヒアリング - 状況やニーズを正確に把握する
- 実際に試してくれる - 提案だけでなく、実際に試してみせてくれる

イライラする電話対応との対比
反対に、イライラする電話対応の典型例は、自動音声による分岐システムです。「入金については1を押してください、解約については3を押してください」という具合に選択を迫られ、なかなか人と話せないというパターンです。
Wixのカスタマーケアも最初の入り口はチャットボットですが、そこからヘルプ記事で解決できない場合は、コールバックに誘導してくれます。AIが困りごとを認識して適切に誘導する仕組みになっています。
ビジネス戦略としてのカスタマーサポート
このようなサポート体制はビジネス戦略としても優れています。エンドユーザー全員に手厚いサポートを提供すると人件費がかかり、利益を圧迫します。しかし、パートナーにサポートを集中させることで・・・
- パートナーのレベルが向上する
- パートナーがエンドユーザーに価値を提供する
- Wix自身はコストを抑えながら、間接的にブランド体験を提供できる
これは非常に効率的なブランド構築の仕組みと言えるでしょう。
カスタマーサポートで実現するブランド価値
私たち自身も、お客様から問い合わせを受けることがありますが、Wixのようにしっかりとカスタマーケアができているかというと、まだまだ改善の余地があります。
デビッド・アーカーさんが言うように、これからはストーリーが大事です。そのストーリーは実体験から生まれ、企業のブランドとお客様の接点となるヘルプサポートこそが、ブランド体験を実感できる最高の場であり、ストーリーが生まれる瞬間なのです。
カスタマーサポート改善のポイント
- 人間的な対応を心がける - 機械的な対応ではなく、共感と理解を示す
- 解決策だけでなくプロセスも大切に - 問題解決までの過程も顧客体験の一部
- パートナー制度の活用 - 直接的なサポートが難しい場合は、パートナーを育成する
- AIと人間のベストミックス - 初期対応はAIで効率化し、複雑な問題は人間が対応
- ストーリーを意識する - 顧客との各接点が潜在的なストーリーになることを意識する
どんな小さな会社であっても、このヘルプサポートをしっかりと構築していくことが、今後のブランド戦略において非常に重要です。顧客が最も困っている時にこそ、最高のブランド体験を提供することで、強力なブランドロイヤリティを構築できるのです。
ブランディングとマーケティングの本質は、顧客との接点すべてにおいて一貫した価値を提供することにあります。その中でも、カスタマーサポートは顧客が本当に困った時に接する重要な接点です。この機会を活かし、単なる問題解決の場ではなく、強力なブランド体験を創出する場として捉え直してみてはいかがでしょうか。
そんなもっとものことを言っているわりには、当社、BrandBuddyzはWixのようなヘルプサポートはできておりません!笑。なので、日々精進ですね。