ジャーニーオーケストレーションの基本概念から実装方法まで徹底解説。マーケティング担当者・中小企業経営者必見の顧客体験向上戦略をオーケストラの比喩で分かりやすく説明します。
この記事を2025年7月9日に Podcast に配信した音声を元に作成しています。 ポッドキャストも合わせてお聞きください。
はじめに:なぜ今「指揮者」が必要なのか?
沖縄県うるま市とファミリーマートのタイアップ商品が話題になっています。これまでバラバラに活動していた地元企業が市長の指揮のもと一つにまとまり、大きな成果を生み出している事例です。
実は、この「指揮者」の考え方こそが、現代マーケティングにおけるジャーニーオーケストレーションの本質なのです。
多くの企業では、マーケティング部門、営業部門、カスタマーサポート部門がそれぞれ別々に顧客とコミュニケーションを取っています。その結果、顧客は「毎回同じ説明を求められる」「ウェブサイトの情報が店舗に伝わっていない」といった、ちぐはぐな体験を強いられています。
この記事では、そんな部門間の壁を打ち破り、顧客一人ひとりとの関係を劇的に改善するジャーニーオーケストレーションについて、具体例を交えながら分かりやすく解説します。
ジャーニーオーケストレーションとは?基本概念を理解する

オーケストラに例えた分かりやすい定義
ジャーニーオーケストレーションとは、企業の活動を「顧客という一人の聴衆のために最高の演奏を届けるオーケストラの指揮者」に変える戦略のことです。
オーケストラでは、バイオリン、トランペット、打楽器といった個々の楽器がそれぞれ勝手に音を出したら、それはただの騒音です。優れた指揮者がいてこそ、全体の調和を取りながら一つの美しい音楽体験を奏でることができます。
企業活動も全く同じです。マーケティング部門が送るメールマガジン、営業担当者の提案、カスタマーサポートの対応がバラバラだと、顧客は混乱し不快な思いをしてしまいます。
従来のマーケティングオートメーション(MA)との違い

よく混同されがちなのが、マーケティングオートメーション(MA)との違いです。分かりやすく車の運転に例えてみましょう。
従来のMA:観光バス
- 事前に決められたルートを走る
- 企業が設計した決まったコースに顧客を乗せていく
- 企業主導の発想
ジャーニーオーケストレーション:高性能カーナビ
- 顧客がどこに行きたいかという目的地をリアルタイムに察知
- その時々の道路状況に合わせて最適なルートを提案
- 寄り道したくなったら、それに合わせて新しいルートを瞬時に提示
- 主導権は常に顧客にある
この企業主導から顧客主導への思想転換こそが、ジャーニーオーケストレーションの最も重要なポイントです。
ジャーニーオーケストレーションがもたらす3つの価値

1. 売上の向上
具体例:小売店の事例 顧客がスマホで商品をチェックした後、店舗に立ち寄ったとします。ジャーニーオーケストレーションがあれば、店員はその顧客がオンラインで何に関心を持っていたかを把握した上で、「こちらの商品、先ほどサイトでご覧になられてますよね」と的確な接客ができます。
具体例:航空会社の事例 航空券を予約した顧客に、その旅先に合ったレンタカープランを推奨するクロスセルも自動的かつ的確に行えるようになります。
2. コストの削減
具体例:電力会社の事例 停電が起きた時、顧客が電話をかけてくる前に、影響を受ける顧客をシステムが自動で特定し、「現在復旧作業中で見込みは○時です」とショートメッセージを送る仕組みを構築。これによりコールセンターへの問い合わせ殺到を防ぎ、業務負荷を劇的に削減できました。
3. 組織の変革
ジャーニーオーケストレーションを成功させるには、マーケティング、営業、IT、カスタマーサービスといった全部門が同じ顧客データを見て協力することが不可欠です。
共通の基盤を持つことで、今までバラバラだった部門が「顧客のために」という一つの目的に向かって連携し始め、長年の課題だった部門間のサイロ化が自然と解消されていきます。
実装のための5ステップアクションプラン

ステップ1:スモールスタートで価値を証明する
いきなり全社で大々的に始めるのはリスクが高すぎます。まずは最も課題が分かりやすく、成果を測定しやすい領域に絞って始めましょう。
具体例:ECサイトのカート放棄対策 商品をカートに入れたけれど購入せずに離脱してしまった顧客に、翌日特別なオファーを送るといった小さなジャーニーから開始。
この施策で「売上がこれだけ回復した」という具体的な成功体験を作ることが、次の大きな投資への強力な説得材料になります。
ステップ2:データ統合を最優先課題とする
ジャーニーオーケストレーションという指揮者がタクトを振るためには、その手元に楽譜、つまり統合された顧客データがなければ何も始まりません。
まずは自社の顧客データが今どこにどんな状態で散らばっているかを地図に描くことから始めてください。
- 営業部門の顧客リスト
- マーケティング部門のメール配信リスト
- 店舗の購入履歴
これらを一つに統合する**顧客データプラットフォーム(CDP)の導入を本格的に検討することが、ジャーニーオーケストレーション成功の最も確実な一歩となります。
ステップ3〜5:段階的な拡張
- ステップ3:部門間の連携体制構築
- ステップ4:リアルタイム分析基盤の整備
- ステップ5:AI活用による自動最適化の実装
中小企業でも始められる実践的なツール選択
多くの企業がHubSpotのような高機能ツールを検討しますが、中小企業には費用面でハードルが高いのが現実です。
おすすめの代替ソリューション:
- Wix Studio:ウェブサイト制作ツールでありながら、オンラインショップでの購入後フローの統合管理が可能
- 低コストMA/CRMツール:Zoho、Pipedrive、Mailchimpなどの組み合わせ活用
重要なのは、完璧なツールから始めることではなく、顧客データの統合と基本的な自動化から段階的に始めることです。
まとめ:あなたの会社にも指揮者を迎え入れよう
ジャーニーオーケストレーションは、一言で表現するなら「企業目線ではなく顧客目線で最高の体験を提供する戦略」です。
現代のマーケティングにおいて、やるべきことは多く、発信する媒体も多様化し、顧客のニーズも複雑になっています。この状況下で、一人ひとりの顧客に「あなたのためだけのオーケストラ」を奏でることができれば、顧客は感動し、心地よい体験を得ることができます。
そのためには、バラバラなメロディーを奏でるのではなく、優れた指揮者(ジャーニーオーケストレーション)が必要なのです。
あなたの会社も指揮者を置いて、顧客を感動させる体験価値を提供するメロディーを奏でてみてはいかがでしょうか。
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