こんにちは、照屋です。今日は、テレビCMソングについてお話ししたいと思います。デジタル広告が全盛の時代ですが、沖縄ではまだまだテレビCMの影響力が大きいです。実際、広告予算の中でテレビが占める割合も少なくはなく、その影響力は侮れません。
特に、テレビCMソングは短時間で消費者の記憶に残り、購買行動に結びつける強力な手法です。15秒という限られた尺の中で、いかにして視聴者の心に残るか。それには、メロディや言葉の選び方が非常に重要です。今日は、そんなテレビCMソングの効果を、いくつかの具体例とともに解説していきたいと思います。
この記事は2024年10月6日にポッドキャストにて配信した音声をベースに記事化したものになります。ポッドキャストも合わせてお聞きください。
まず、思い出に残っているCMソングの一つが、西友の「西友にとりあえず行けや」です。このCMは、子どもの声で「西友にとりあえず行けや」と連呼し、ユーモアたっぷりに視聴者の耳に残るものでした。実際、2010年代に流れていたこのCMは、競合であるIKEAやニトリを連呼しながら、独自のポジショニングを強調するという非常に興味深い戦略を取っていました。「西友ニトリあえずIKEA」。秀逸ですね。
「西友にとりあえず行けや」は、IKEAやニトリという競合他社を名前で挙げつつ、自社の優位性を強調しています。比較広告の効果的なポイントは、消費者に「選択肢」を与えながらも、どちらがより便利かを提示するところです。このCMでは、「IKEAやニトリに行く前に、まずは西友に行ってみよう」と、あたかも西友が第一選択肢であるかのように仕向けています。
この手法は、消費者に「とりあえず行ってみようかな」と思わせる効果があります。名前を挙げつつも攻撃的にならないユーモアのある表現は、視聴者に親しみを持たせ、敵対心を感じさせない巧みな比較広告の例です。
こちらがそのCMです。
「第一想起」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これは、特定の商品カテゴリーを考えたときに、消費者が最初に思い浮かべるブランドのことです。この西友のCMソングは、IKEAやニトリといった大手の競合がある市場で、「まずは西友に行こう」というメッセージを消費者の頭に刷り込む狙いがあったのではないでしょうか。
ソングのメロディが耳に残ることで、消費者が家族や友人と話をする際にも自然と話題に上りやすく、ブランドの認知を高める効果があります。これは、特にテレビCMのような短時間での情報提供において非常に効果的です。
西友は、IKEAやニトリとは違い、食品や日常品を扱うスーパーです。しかし、このCMではあえて家具や雑貨という市場にも触れ、消費者に新生活に必要なものがすべて西友で揃うというイメージを強調しました。これは、ポジショニング戦略の典型例であり、自社の強みを他の競合とは異なる形で打ち出すことで、競争力を高めています。
最後のメッセージに「だって家具や雑貨も安いんだもの」「新生活も価格安く(KY)」と締め括られています。このフレーズに当時の西友の戦略が込められてますね。
スーパーだけど、IKEAやニトリにあるような家具や雑貨も置いてある。両者のターゲットを取り込む狙いですね。
次に、沖縄の麦飯石の水についてお話しします。水という商品は、味や成分での差別化が非常に難しいため、マーケティングによるブランディングが極めて重要です。麦飯石の水のCMは、「楽しさいっぱい」というフレーズが印象的で、これが消費者の心に響いていると想定されます。
麦飯石の水のCMでは、小学校の教室で子どもたちが元気に遊ぶシーンが使われ、親子の会話のきっかけを作るような内容になっています。このような「感情喚起型」の広告は、消費者の購買意欲を高める上で非常に効果的です。視聴者にとって、この水が単なる「飲料水」ではなく、楽しい生活の一部として描かれています。
こちらがそのCMです。
「楽しさいっぱい」というフレーズが、CMを通じて一貫して使われています。ブランディングの一貫性は、消費者に安心感を与え、信頼を築くために欠かせません。麦飯石の水は、このフレーズを使い続けることで、視聴者に「楽しい水」というイメージを定着させることに成功しています。
さらに、子どもを主役にしたCMは、家族全員にアピールする手法です。子どもが楽しくCMを見て、親に「この水がいい」とねだることで、家庭全体の購買意思決定に影響を与える「ファミリーマーケティング」も成功しています。
今回、西友と麦飯石の水の2つのCMソングを例に、マーケティング戦略の重要性についてお話ししました。これらのCMに共通しているのは、消費者の記憶に残るメロディとメッセージを活用し、感情的なつながりを築くことです。そして、競合を意識しながらも、自社のポジショニングを巧みに強調することで、選ばれるブランドとしての存在感を確立しています。
また、デジタル広告が普及している今でも、テレビCMのような制限がある中でのクリエイティブな発想は非常に価値があります。限られた時間の中で、いかにして消費者に行動を促すかという点で、テレビCMのノウハウはデジタルマーケティングにも応用可能です。
私たちの仕事でも、こうした消費者心理を理解し、記憶に残るクリエイティブな手法を活かしていくことが求められます。短い時間やスペースの中で、どうやって自社のメッセージを伝えるのか。この挑戦こそが、マーケティングの醍醐味だと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。皆さんも、日常の中で見たCMソングが、どのように自分たちの購買行動に影響を与えているかを意識してみてください。それが、次のマーケティング戦略のヒントになるかもしれません。