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AI時代、経営者が磨くべきは「暗黙知」である。2026年のAI経営戦略論

Hiroki Teruya By Hiroki Teruya
AI時代、経営者が磨くべきは「暗黙知」である。2026年のAI経営戦略論

2026年、明けましておめでとうございます。 私も新年早々、朝10時からミーティング続きで、熱い議論を交わしてきました。

さて、生成AIがビジネスの現場に浸透しきった今、改めて問われていることがあります。 「AIは私たちの仕事を奪うのか? それとも共存するのか?」

この議論はもう何年も繰り返されてきましたが、2026年の現在、一つの明確な結論が出ています。 それは、「AIの進化によって、人間の価値は下がったのではなく、むしろ『言語化できない知識(暗黙知)』の価値がかつてないほど急上昇している」ということです。

今日のブログでは、私のポッドキャストの内容をベースに、経営者やマーケッターがこれからの時代に持つべき「視点」と、具体的な「スキルの磨き方」について深掘りしていきます。AIを単なるツールとしてではなく、経営の参謀として使いこなすためのヒントになれば幸いです。

ビデオポッドキャストはこちらからご視聴ください。

 

1. 「形式知」の価格破壊と「暗黙知」の復権

なぜ今、これほどまでに「人間」の価値が再定義されているのでしょうか。 その背景にあるのは、「形式知(けいしきち)」の徹底的なコモディティ化(一般化)です。

AI経営は暗黙知に価値がでる

形式知とは何か?

形式知とは、マニュアル、データ、教科書、プログラミングコードなど、「言葉や形にして保存・伝達できる知識」のことを指します。

かつて、この形式知を多く持っていることはビジネスにおける強みでした。しかし、今は違います。GeminiやChatGPTなどのAIを使えば、世界中の形式知に一瞬でアクセスし、要約し、80点レベルの答えを数秒で出力してくれます。

今皆さんがご覧になっているこの記事の構成案も、私の考えを元にAIが数分で叩き台を作っています。つまり、「マニュアル通りの正解」や「情報の検索・整理」には、もはや人間が介在するコストに見合う価値はありません。

AIがアクセスできない「暗黙知」

一方で、価値が急騰しているのが「暗黙知(あんもくち)」です。 暗黙知とは、以下のようなものを指します。

・ 長年の経験則 ・ 職人の勘 ・ 現場の空気感 ・ 身体的な直感 ・ 文脈(コンテキスト)

これらはデータ化されておらず、言語化も難しいため、AIが学習データとして取り込むことができません。AIは「正解」を出すのは得意ですが、その正解を導き出すための「文脈」や、現場で感じる「違和感」までは理解できないのです。

氷山モデルで考える

これを「氷山」に例えてみましょう。 水面の上に出ている目に見える部分、これが「形式知」です。AIが見ているのは、この氷山の一角に過ぎません。

しかし、水面下には巨大な氷の塊が潜んでいます。これこそが「暗黙知」です。 哲学者マイケル・ポランニーは「我々は言葉にできるより多くのことを知っている」と言いました。経験、感情、想い、現場の匂い……この水面下の領域をどれだけ深く持っているかが、これからのビジネスの勝敗を分けます。

2. なぜ経営に「暗黙知」が不可欠なのか? 3つの理由

では、なぜビジネスの現場、特に経営判断において暗黙知が必要なのでしょうか。理由は大きく3つあります。

イノベーションの源泉

① イノベーションの源泉だから(0→1)

AIは「結合」が得意です。既存の要素を組み合わせて「1を100にする」スピードは人間を遥かに凌駕します。 しかし、「0から1を生み出す」のは苦手です。

新しいビジネスのアイデアは、論理的な計算の積み上げからは生まれません。「現場で感じる『なんとなく不便だな』という違和感」や、「『これだ!』という身体的な直感」から生まれます。 着想、身体性、非連続的な結合。これらは人間にしかできない特権であり、イノベーションの種(0→1)は常に暗黙知の中に眠っています。

② 「問い」を立てる力(良質なプロンプト)

「AIは答えを出せるが、問いは出せない」とよく言われます。 厳密にはAIに問いを出させることも可能ですが、「良い指示(プロンプト)」を出すためには、言語化しにくい目的意識や文脈理解が必要不可欠です。

自分の内側に深い暗黙知(経験や知識の厚み)がある人ほど、AIに対して鋭い指示が出せます。 「この文脈なら、こういう視点の分析が必要ではないか?」 「顧客の潜在ニーズはここにあるはずだから、そこを深掘りしてくれ」 逆に、中身が空っぽの人がAIを使っても、浅い答えしか返ってきません。AIのアウトプットの質は、使い手の暗黙知の深さに比例するのです。

③ 真偽を見抜く「審美眼」

AIは平気で嘘をつきます(ハルシネーション)。また、嘘ではなくとも、当たり障りのない「平均的なアウトプット」を出す傾向があります。

AIが出してきた戦略案が本当に現場で使えるものなのか。 生成されたデザインが本当に人の心を動かすものなのか。

その「良し悪し」を最終的に判断(ジャッジ)できるのは誰でしょうか? それは、その道を極めた人間、現場を知り尽くした経営者しかいません。AI時代、人間の役割は「作成者」から「監査役」あるいは「指揮官」へとシフトします。その際、判断基準となるのが、あなた自身の身体に染み込んだ暗黙知なのです。

3. AI時代に勝つための「個人の鍛錬」

では、私たちはどのようにしてこの暗黙知を磨けばよいのでしょうか。私が実践している3つのトレーニングをご紹介します。

① 現場への没入(一次情報を取りに行く)

ネットで検索して分かった気にならないこと。これが最も重要です。 AIが学習できないのは「一次情報」です。

私はかつて、製造業のクライアントを開拓する際、必ず現場へ足を運びました。 切削機械が動く音、オイルの匂い、床に落ちている鉄屑、70代のベテラン職人が若手に指導する眼差し。 機械自体はプログラム(形式知)で動いていますが、最後の仕上げや微調整には、職人の長年の勘(暗黙知)が宿っています。

Zoom会議だけでは伝わらない、その場の「空気」を自分の五感で吸い込むこと。この身体的な体験こそが、独自のデータベースとなり、AIには真似できない戦略の源泉となります。

② アナロジー思考(文脈変換の練習)

異なる文脈へ変換して説明する練習です。「例え話」と言ってもいいでしょう。 物事を深く理解(腹落ち)していないと、適切な例え話はできません。

例えば、私は昔、Googleの検索エンジンの仕組みをお客様に説明する際、「図書館」に例えていました。
・ Webサイト = 本
・ クローラー = 整理係(インデックスを貼る)
・ 検索エンジン = 図書館の司書さん

「司書さん(Google)に『何かいい本ない?』と聞いても困りますよね。『どんな情報が知りたいですか?』と聞かれた時、薄っぺらいパンフレットより、内容の分厚い専門書を紹介したくなるはずです。だからコンテンツの中身(厚み)が重要なのです」

このように、専門用語を使わずに別の何かに例える訓練は、抽象度を操作する「頭の筋肉」を鍛えます。この能力は、AIへの指示出し(プロンプトエンジニアリング)の精度向上にも直結します。

③ 現代版SECI(セキ)モデルの実践

組織として知識を創造するフレームワーク「SECIモデル」を、AI時代に合わせてアップデートしましょう。ポイントは「人間がやるべきこと」と「AIに任せること」の完全分業です。

現代SECIモデル

  1. 共同化(Socialization):
    ・ 担当:人間 ・ 飲み会、OJT、現場体験など。身体感覚や暗黙知を共有し、チームの熱量を高めるフェーズです。ここはAIには代替できません。

  2. 表出化(Externalization)& 連結化(Combination):
    ・ 担当:AI(人間が指示)
    ・ 得られたアイデアや暗黙知を言語化し、マニュアルや資料にまとめる作業です。ここはAIの独壇場です。
    ・ 私もスタッフには「タスクを分解する癖をつけて」と伝えています。AIに渡せる形に業務をパッケージ化する能力が求められます。

  3. 内面化(Internalization):
    ・ 担当:人間 ・ AIがまとめた形式知を元に、人間が再び現場で実践し、新たな暗黙知として身体に取り込むフェーズです。

「人間が体験し、AIがまとめ、また人間が実践する」。このサイクルを高速で回せるチームこそが、これからの最強の組織になると確信しています。

まとめ:AIは参謀、あなたは指揮官。

AIは優秀な「参謀」であり、実務部隊です。 しかし、どこへ向かうべきかという旗を揚げ、「何が正しいか」「何が美しいか」を決める「指揮官」は、やはり人間でなければなりません。

AIと人の役割は形式知と暗黙知

その意思決定の根拠は、データの中ではなく、あなた自身の中にある「暗黙知」にしか存在しません。

ネット上の情報はAIの学習データになりますが、ネット上にない「あなたの一次情報」こそが、これからの最大の差別化要因になります。 ぜひ、2026年はAIを参謀として使いこなし、あなた自身のミッション・ビジョンを実現する「指揮官」として飛躍してください。

今年も、ポッドキャストやブログを通じて、AIとマーケティングの最前線を皆さんと一緒に学んでいければと思います。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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