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ジャングリア沖縄の恐竜マーケティングは「もったいない」世界観構築と地域を巻き込む戦略はある?

Hiroki Teruya By Hiroki Teruya
ジャングリア沖縄の恐竜マーケティングは「もったいない」世界観構築と地域を巻き込む戦略はある?

私の住む沖縄で今まさに大きな注目を集めるべきプロジェクト、「ジャングリア沖縄」について、特にその「恐竜」テーマの打ち出し方について、個人的に感じている「もったいなさ」と、なぜそう感じるのか、そしてどうすればもっと良くなるのではないか、という提言をブログ記事としてまとめたいと思います。Podcastでお話しした内容を、さらに掘り下げていきます。

この記事は2025年4月29日にポッドキャストにて配信した音声をベースに作成しています。 Podcast も合わせてお聞きください。

 

世界観こそがブランディングの核

まず大前提として、どんなビジネスにおいても「世界観」を創り出すことは、ブランディングにおいて非常に重要です。これは、皆さんも感覚的にご理解いただけることでしょう。そして、その「世界観」が最も重要視されるべき業態は何かと問われれば、私は迷わず「テーマパーク」だと答えます。

人々は、非日常の体験、その場所にしかない独自の物語や雰囲気を求めてテーマパークに足を運びます。だからこそ、世界観の作り込みが甘ければ、どんなに素晴らしいアトラクションがあっても、その魅力は半減してしまうのです。

期待のジャングリア沖縄と「恐竜」というキラーコンテンツ

さて、沖縄北部で開業準備が進む「ジャングリア沖縄」。これは、USJをV字回復させた森岡毅さん率いる「刀」が仕掛ける一大プロジェクトです。沖縄の立地的優位性を活かし、国内外から観光客を呼び込み、日本全体を盛り上げようという壮大な構想。期待しないわけがありません。

そして、その目玉となるテーマが「恐竜」であると発表された時、正直「やっぱり!」と思いました。2年ほど前から、私自身も「ジャングリアは恐竜だろう」と予想していましたし、恐竜というテーマは、世代や国境を超えて多くの人々を惹きつける、まさにキラーコンテンツです。私も恐竜が大好きなので、期待は高まるばかりでした。

しかし、なぜか盛り上がりに欠ける現状

7月のオープンが迫っているにも関わらず、私の周囲、特に沖縄県民の間で、ジャングリアに関する「熱」のようなものが、予想していたほど感じられないのです。もちろん、経済界や一部のメディアでは取り上げられています。しかし、一般の人々、特にメインターゲットとなるであろうファミリー層などを巻き込んだ「ワクワク感」が、どうも希薄なように思えるのです。

これは、私の期待値が高すぎただけなのでしょうか?それとも、あえて情報をコントロールし、期待値を調整しているのでしょうか?ブランディングやマーケティングのプロ集団である「刀」チームが仕掛けるのですから、緻密な戦略があるはず…そう思っていました。しかし、現状を見る限り、少し疑問を感じざるを得ません。

疑問符がついた「恐竜誕生」広告

その疑問が確信に変わりかけたのが、先日、新聞などで展開された「恐竜誕生!名前募集」の広告キャンペーンです。恐竜の赤ちゃん(とされるもの)の映像と共に名前を公募するという企画自体は、話題作りの一手として理解できます。

 

しかし、その見せ方、特に「恐竜が誕生した」という表現には、強い違和感を覚えました。これは、子どもたちを中心に「本当に恐竜が生まれたんだ!」という誤認を生む可能性が高いのではないでしょうか?SNSなどでも「これは誤認広告ではないか」「子どもを騙すことにならないか」といった指摘が見られました。

もちろん、エンターテイメントとしての演出であることは大人には理解できます。しかし、プロジェクトが一般向けに初めて大々的に情報を発信する「入口」として、この手法はどうだったのか。

正直に言って、私はこの広告の打ち出し方を「チープだ」と感じてしまいました。そして何より、「もったいない」と。せっかくの恐竜というテーマを、もっと夢のある、ワクワクする形で提示できなかったのでしょうか。この一件で、少しプロジェクトの雲行きに不安を感じたのは、私だけではないはずです。

公式サイトに漂う「ワクワク感」の欠如

不安を感じながら、ジャングリア沖縄の公式サイトや関連情報をチェックしてみました。恐竜がテーマであることは伝わってきますし、様々なアトラクションが用意されていることも分かります。しかし、そこには決定的に「ワクワク感」が足りないように感じました。

ダイナソー サファリ

例えば、私が以前クライアントとしても関わったことがある、埼玉・所沢の恐竜エンターテイメント「DINO-A-LIVE」。彼らは、恐竜(もちろん中に人が入り、メカトロニクスを駆使したものですが)のリアルな動きや生態をとことん追求し、あたかも本物の恐竜が目の前にいるかのような興奮と感動を提供しています。

彼らのWebサイト戦略で秀逸だったのは、「公式サイト」とは別に、恐竜そのものにフォーカスした「ブランドサイト(図鑑サイト)」を用意したことです。子どもたちが恐竜に興味を持ってサイトを訪れたとき、いきなりビジネスライクな情報に触れて興醒めしないよう、まずは恐竜の世界にどっぷり浸れる場所を用意したのです。その図鑑サイトを見ているだけで、「この恐竜、すごい!」「本物を見てみたい!」という気持ちが高まり、自然とライブイベントへ足を運ぶ動線が設計されていました。

翻って、ジャングリア沖縄のサイトはどうでしょうか。恐竜を前面に出している割には、恐竜に関する独立したコンテンツや、その生態、魅力を深く掘り下げるようなページが見当たりません。

アトラクション紹介の一部として恐竜が登場するだけで、サイト全体がビジネスライクな印象を受けます。恐竜というテーマが持つ「物語性」や「探求心」をくすぐる仕掛けが、あまりにも弱い。これでは、例の広告で「恐竜が生まれたらしい」と興味を持った子どもがサイトを訪れても、その期待感を持続させるのは難しいのではないでしょうか。正直、サイト全体の作りも、もう少し工夫できたのでは…と感じてしまいます。ユーザー導線の設計も十分に練られているとは言い難い印象です。

さらに、Twitterで公開された「赤ちゃん恐竜」の動画。ニュース番組風の演出ですが、残念ながら恐竜がロボットであることが容易に見て取れてしまいます。背景からもリアルさからは程遠い。これもまた、「世界観」を壊してしまっている要因の一つだと感じました。

グッズ展開も「動機付け」が弱い

恐竜は、特定の版権元が存在しないため、グッズ展開がしやすいというメリットがあります。ジャングリア沖縄でも、当然ながら関連グッズの販売が告知されています。しかし、現状のプロモーションでは、そのグッズが「欲しい!」と思わせるだけの強い動機付けができていないように思います。

魅力的な世界観に浸り、キャラクターや物語に感情移入してこそ、「記念に何か買って帰りたい」という欲求が生まれます。今の段階でグッズを見せられても、多くの人は「ふーん」で終わってしまうのではないでしょうか。ここにも、根本的な「世界観構築」と「物語戦略」の不足が現れているように感じます。

私ならこうする:物語と地域を巻き込む戦略

では、もし私がジャングリア沖縄の恐竜マーケティングを担当するなら、どうしたでしょうか?

まず、少なくともプロジェクト発表段階、あるいはもっと前の2年前くらいから、ジャングリア沖縄とは直接結びつけずに、沖縄を舞台にした「恐竜」に関するオウンドメディア(Webサイトやブログ、SNSアカウントなど)を立ち上げます。「もし、沖縄に恐竜がいたら…?」といった想像力を掻き立てるコンテンツや、恐竜の生態に関する質の高い情報、最新の研究などを発信し続けるのです。あたかも「沖縄恐竜図鑑」のような存在を目指し、恐竜好きなら誰もが知っている、信頼できる情報源としての地位を確立します。

そして、開業が近づくにつれて、そのメディア上で「謎の痕跡発見!」とか「古代の地図が見つかった?」といった、ジャングリア沖縄のストーリーに繋がるような伏線を散りばめていきます。例えば、県内の公園で謎の化石(のようなもの)が見つかり、そこにジャングリアのロゴ(のようなマーク)が描かれていた…それを高校生がSNSにアップして話題になる、といった仕掛けです。

さらに、地域、特に子どもたちを巻き込む施策も重要です。小学校などで恐竜に関する出前授業を行ったり、自由研究のテーマとして協力したりするなど、教育的な観点からもアプローチします。地元の子どもたちが「ジャングリアって面白そう!」「私たちの島に恐竜が来るんだ!」と自然に思い、家族や友人に話したくなるような状況を作り出すのです。

沖縄という土地柄を考えると、「また本土の企業が来て、自然を利用して儲けようとしている」といった見方をされやすい側面もあります。だからこそ、一方的な情報発信ではなく、地域住民が「自分たちのプロジェクトだ」と感じられるような、丁寧なコミュニケーションと機運醸成が不可欠なのです。

「もったいない」からこその期待

ここまで、かなり辛口な意見を述べてきました。これは、私が恐竜好きであり、沖縄県民であり、そして何よりジャングリア沖縄というプロジェクトに大きな期待を寄せているからです。ポテンシャルは計り知れない。だからこそ、現状のプロモーション戦略が、そのポテンシャルを最大限に活かしきれていないように見えて、「もったいない!」と感じてしまうのです。

もちろん、これはあくまで現時点での私の個人的な見解です。もしかしたら、これから驚くような展開が待っているのかもしれませんし、意図的に期待値をコントロールしているのかもしれません。しかし、そうだとしても、情報発信の「質」や「見せ方」には、もっと改善の余地があるように思います。

7月の開業に向けて、ジャングリア沖縄が、私たちが想像する以上の「ワクワク」を提供してくれることを、心の底から願っています。そして、このブログを読んでくださったあなたが、ジャングリア沖縄のマーケティングについてどう感じたか、ぜひ聞かせていただけたら嬉しいです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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