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カスタマージャーニーマップはもう古い?顧客の心を動かす「感情曲線」エモーショナルジャーニーとは?

Hiroki Teruya By Hiroki Teruya
カスタマージャーニーマップはもう古い?顧客の心を動かす「感情曲線」エモーショナルジャーニーとは?

従来のカスタマージャーニーマップでは顧客の心は掴めない?本記事では、これからのマーケティングの鍵となる「感情曲線(エモーショナルジャーニー)」を、私自身の実体験を元に徹底解説。ファンを生み出す新しい顧客体験の設計方法がわかります。

この記事は2025年6月12日にポッドキャストにて配信した音声を元に作成しています。 ポッドキャストも合わせてお聞きください。

 

「自社の商品やサービスをもっと多くの人に届けたい」
ビジネスを営む方なら、誰もがそう願っているはずです。しかし、「どうすればお客さまが集まるのか」「どうすればファンになり、口コミをしてくれるのか」という問いに、日々頭を悩ませているのではないでしょうか。

その答えのヒントは、私たちが当たり前のように使ってきた「カスタマージャーニーマップ」の発想をアップデートすることに隠されています。

私たちは、地方の中小企業のWebサイトや動画を活用した支援のほか、地元沖縄県うるま市の観光プロモーションにも7年ほど関わっています。

今日は、私が日々の業務と実体験から確信した、これからの時代のマーケティングに不可欠な考え方についてお話しします。少し挑戦的なテーマですが、「カスタマージャーニーマップはもう古い」という視点から、顧客の心を本当に動かすアプローチを深掘りしていきましょう。

なぜ、従来の「カスタマージャーニーマップ」では不十分なのか?

マーケティングに関わる方なら、「カスタマージャーニーマップ」という言葉を一度は聞いたことがあるでしょう。ペルソナ(架空の顧客像)を設定し、その人物が商品を認知し、購入し、ファンになるまでの「行動」や「接点(タッチポイント)」を、一枚の地図のように可視化するフレームワークです。

エモーショナルジャーニーとは

このマップを作ることで、プロジェクトチーム内の認識が揃い、顧客の行動を客観的に議論できるため、非常に有効なツールとして長年使われてきました。

しかし、私はこの従来の手法に限界を感じています。なぜなら、情報が爆発的に溢れる現代において、人はもう、それほど論理的にモノを買わなくなっているからです。

人は理屈ではなく「感情」でモノを買う

従来のマーケティングでは、「認知→検索→比較検討→意思決定→共有」といった、直線的で論理的な購買プロセスが前提とされていました。しかし、私たちの実際の行動は、もっと衝動的で、感情に突き動かされていませんか?

例えば、先日私が体験した話です。 特に目的もなく散歩をしていると、牛のロゴが印象的な、雰囲気の良い革製品のお店が目に留まりました。ふらっと中に入ると、奥では職人さんが一人、黙々とミシンを踏んでいます。

私が商品を手に取ると、彼は作業の手を止め、その革がどんな場所で育ち、どんな想いで作られているのかを、本当に楽しそうに語り始めました。その目や仕草から、「この仕事が、この革が、心から好きなんだ」という愛がひしひしと伝わってくるのです。

もともと革製品を買う予定など全くなかったのに、私はその職人さんのファンになり、気づけば手持ちのお金で買えるコインケースを手に、店を出ていました。

この購買行動の中に、「比較検討」はあったでしょうか?答えはノーです。あったのは、作り手の物語への「共感」と、その人を応援したいという「感情」だけ。

この経験から分かるように、人の心を動かし、最終的な行動を決定づけるのは、ロジカルな思考プロセスだけではありません。むしろ、論理を飛び越えるほどの強い「感情の揺さぶり」こそが、現代の購買行動の鍵を握っているのです。

新しい羅針盤「感情曲線(エモーショナルジャーニー)」とは?

行動だけを追うマップでは、この「感情の揺さぶり」を捉えることはできません。そこで私が必要だと考えているのが、「感情の旅」、すなわち「エモーショナルジャーニー」を描くことです。

エモーショナルジャーニーにはガイドが必要

そして、その旅路を可視化したものこそが、新しい時代の羅針盤「感情曲線」です。

これは、単にポジティブな感情だけを並べるものではありません。むしろ、物語の基本構造である「V字回復」のプロセス、つまり、顧客が抱えるマイナスの状態から、いかにしてプラスの状態へと導くか、その感情の軌跡を描き出すことに本質があります。

この「感情曲線」を設計する上で、従来のマーケティングから発想を大きく転換すべき点が2つあります。

転換①:主役は商品ではなく「お客さま」

これまでのマーケティングでは、自社の商品やサービスが「主人公」でした。「この素晴らしい商品が、あなたの問題を解決します!」というメッセージが中心だったのです。

しかし、これからは違います。物語の主人公は、常にお客さま自身です。

そして、あなたの会社やブランドは、問題を抱える主人公を助け、導き、成長を支援する「ガイド役(案内人)」に徹するべきなのです。お客さまという主人公が、あなたのサポートによって困難を乗り越え、ハッピーエンドを迎える。その物語をデザインすることが、これからのブランディングの核となります。

転換②:「マイナス」の状態から物語を始める

感情のV字回復を描くためには、物語の始まりが重要です。それは、お客さまが抱えている「悩み」「不安」「不満」といった、リアルな「マイナスの状態」です。

多くの企業は、自社のポジティブな側面ばかりを伝えがちですが、顧客が本当に共感するのは、自分と同じ痛みや課題を理解してくれる存在です。

お客さまの「マイナス」から目をそらさず、そこに寄り添い、「ここから一緒に、プラスの未来へ向かいましょう」と手を差し伸べること。それが、「感情の旅」の信頼できるガイド役になるための第一歩なのです。

実体験で学ぶ「感情曲線」の描き方

この「感情曲線」の考え方は、机上の空論ではありません。私自身が最近、中学2年生の長男との関わりの中で、その効果を痛感する出来事がありました。

「マイナスの葛藤」から始まったV字回復の物語

テスト期間中にもかかわらず、ゲームばかりしてなかなか勉強しない長男。学校の先生からも心配され、親として「この子の将来のために、どう接すればいいのか」と、私は深い葛藤の中にいました。厳しく叱るべきか、優しく褒めるべきか、答えが見えないのです。長男自身も、できない自分にもどかしさを感じていたでしょう。私たちの関係は、まさに「マイナスの谷底」からスタートしました。

子供のテスト勉強の葛藤はエモーショナルジャーニー

このままではいけない。私は腹をくくり、「父親として、本気で彼と向き合おう」と決意しました。週末、仕事の時間を割いて、徹底的に彼の勉強に付き合ったのです。時にはゲームを取り上げ、厳しく叱りもしました。それは、私にとっても彼にとっても、エネルギーのいる挑戦でした。これが物語の「転換点」です。

そして、テスト初日が終わった昨日のこと。私が仕事を早めに切り上げて家に帰ると、驚いたことに、彼は自ら机に向かって勉強していました。 「テスト、どうだった?」 そう声をかけると、彼は顔を上げ、今まで見たことがないほど自信に満ちた表情で、こう言ったのです。

「数学、思ったより解けた!」

その誇らしげな笑顔を見た瞬間、私の胸に熱いものが込み上げてきました。「やればできるんだ」「逃げずに、本気で向き合ってよかった」と。父親としての自信を取り戻した瞬間でもありました。

これは、まさに「感情曲線」そのものです。 親子双方の「葛藤(マイナス)」から始まり、「本気で向き合う」という行動を経て、息子の自信と成長、そして私の喜びという「最高の瞬間(プラス)」にたどり着いたV字回復の物語。

この体験を通じて、私は確信しました。ビジネスも全く同じだと。 お客さまの悩みという「マイナス」から目をそらさず、どうすれば最高の笑顔という「プラス」に導けるのか。その旅路をデザインし、伴走することこそ、これからのブランドが果たすべき役割なのです。

まとめ:行動を追うな、感情の旅に寄り添え

今日、私は「カスタマージャーニーマップはもう古い」という、少し過激な言葉から話を始めました。 しかし、それは従来の手法を完全に否定したいわけではありません。伝えたかったのは、顧客の「行動」という骨格に、「感情」という温かい血を通わせ、一本の「物語」として再設計する必要があるということです。

マーケティング活動の新しい羅針盤

ぜひ一度、あなたの会社のカスタマージャーニーマップを見返してみてください。 そこに、お客さまの「感情」は描かれているでしょうか? お客さまは、どんな「物語」の主人公になっていますか?

その地図に、お客さまが最初に抱えていたであろう「不安な顔」と、あなたのサービスを通じて手に入れた「最高の笑顔」を書き込んでみてください。きっと、ただの業務ツールだったマップが、あなたとお客さまを繋ぐ、生きた「物語の設計図」に変わるはずです。

行動を追うな、感情の旅に寄り添え。 それが、これからの時代にファンを生み出し、ビジネスを成長させるための、新しい羅針盤だと私は信じています。

BrandBuddyzでは感情ジャーニーマップを作成したうえでのブランド戦略、マーケティング戦略から実行までお手伝いすることが可能です。お気軽にご相談ください。

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