今日は、これからのAI時代におけるクライアントワークについて、特に人間にしかできないヒアリングの重要性についてお話ししたいと思います。
まず、率直に言いますが、生成AIのアウトプットのクオリティは、今後ますます向上し、ライティング、画像制作、動画制作などの分野で人間を凌駕していくでしょう。AIの推論能力も日々進化しています。では、私たちクライアントワークに携わる人間は、どのような役割を担うべきなのでしょうか?
結論から言えば、人間にしかできないのは「ヒアリング」だと考えています。確かに、AIもある程度のヒアリングはできるでしょう。しかし、クライアントが誰と話したいか、という点を考えると、多くの場合、人間との対話を望むのではないでしょうか。
このブログ記事は2024年9月21日にPodcastにて配信した音声をベースに作成したものになります。Spotifyポッドキャストでは映像による解説をご覧いただけますのでPodcastも合わせてご覧ください。
私自身、自分の悩みを打ち明けるなら、AIよりも生身の人間と話したいと思います。おそらく、多くのクライアントも同じ感覚を持っているのではないでしょうか。
人間ができることの核心は、「汲み取り」と「共感力」です。相手の悩みに親身に向き合い、自分の経験と照らし合わせながら理解を深めていく。これは、AIにはできない、人間ならではの能力です。
ただし、5年後、10年後はどうなっているかわかりません。デジタルネイティブ世代がAIとの対話に慣れ親しんでいけば、状況は変わるかもしれません。だからこそ、今のうちに人間ならではのヒアリング能力を磨いておく必要があるのです。
さて、ここからは具体的なヒアリングのテクニックについてお話ししましょう。私が主催している「のぞき見営業オンラインレッスン」というコミュニティでは、フリーランスの方、特に営業が苦手な方向けに、私の経験をアウトプットしています。そこで使用している資料の一部を、今日は皆さんと共有したいと思います。
まず、「ジョハリの窓」というフレームワークをご存知でしょうか。これは、心理学者のジョセフ・ルフトとハリー・インガムが提唱した、対人関係や自己理解のためのモデルです。
ジョハリの窓は4つの領域に分かれています。
効果的なヒアリングの目的は、この「開放の窓」を広げることです。つまり、クライアントと共有する情報や理解を増やしていくことが重要なのです。
では、どうすれば「開放の窓」を広げられるでしょうか。ここで重要になってくるのが、「3つの問い」です。これらの問いを意識しながらヒアリングを進めていくことで、クライアントの本質に迫ることができます。
1.本質は何か?
クライアントの本質的な特性を知るためには、子供時代の話を聞くのが効果的です。例えば、「幼稚園のとき、何にハマっていましたか?」「小学生のとき、周りからどんな子供だと言われていましたか?」といった質問をしてみましょう。
これらの質問を通じて、クライアントの根本的な性格や興味、価値観を探ることができます。例えば、「引っ込み思案だったので、親が心配してダンススクールに通わせた」という話から、クライアントのコミュニケーションに対する姿勢や、挑戦する勇気について知ることができるかもしれません。
2.本当にやりたいことは何なのか?
これは、クライアントのビジョンを確認する問いです。特に2代目経営者などの場合、自分の本当にやりたいことと、現在の立場との間にギャップがあることがあります。
例えば、「元々は製造業で設計の仕事をしていたけど、親の病気で家業を継ぐことになった」といったケースです。このような場合、クライアントの本当の願望と現実の責任の間でどのようなバランスを取るべきか、一緒に考えていく必要があります。
また、ビジョンは企業の成長や経営者の成長とともに変化していくものです。「まずは地域No.1、次は県No.1、そして日本No.1」というように、段階的に大きくなっていくことが多いです。
3.何をなすべきして生まれてきたのか?
これは、クライアントのミッション、つまり使命を探る問いです。「明日死ぬとしたら、何を世界に伝えたいですか?」といった質問を通じて、クライアントの根本的な価値観や、社会に対する貢献の意志を探ることができます。
ミッションが明確になると、どんな困難でも乗り越えられる力が生まれます。なぜなら、ミッションは単なる個人の欲求ではなく、社会から求められる役割だからです。
これらの3つの問いを意識しながらヒアリングを進めることで、クライアントとの間に深い信頼関係を築くことができます。そして、その信頼関係こそが、AIには真似できない、人間ならではの価値なのです。
ヒアリングのプロセスを通じて、「開放の窓」を広げていくことが重要です。クライアントの秘密や隠していたことを引き出し、共有することで、相互理解が深まっていきます。
同時に、「盲点の窓」、つまりクライアントが気づいていない自身や自社の長所を指摘することも大切です。「あなたの会社のこういうところが素晴らしいですね」と伝えることで、クライアントの自己認識を高め、さらなる成長のきっかけを提供できます。
最後に、このようなヒアリングを通じて得た情報は、次のプレゼンテーションや提案に活かすことができます。クライアントの本質、ビジョン、ミッションを理解した上で、どのような価値を提供できるかを考え、提案していくのです。
AI時代だからこそ、人間にしかできない深いヒアリングの重要性は増していきます。テクノロジーの進化に伴い、私たち人間の役割も進化していく必要があります。クライアントの本質を理解し、共に成長していく。それこそが、これからのクライアントワークの真髄なのではないでしょうか。
皆さんも、次のクライアントとの会話で、この「3つの問い」を意識してみてください。きっと、これまでとは違った深い洞察が得られるはずです。それでは、今日はここまで。次回は、さらに具体的なヒアリングのテクニックについてお話ししたいと思います。ありがとうございました。
ヒアリングの重要性について深く知りたいは方はこちらの「潜在ニーズを引き出す質問力」もご覧ください。
刺さる提案をしたい方は「ヒアリングで聞くべき5つのポイント」も参考になると思います。