今日は、クライアントワークを行う上で極めて重要な「相手の頭の中を理解する」というテーマについて、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。特にウェブサイト制作に携わるデザイナーさんに役立つ内容になっていますので、じっくりとお付き合いください。
この記事は2024年9月7日に ポッドキャストにて配信した音声をベースに作成したものになります。Podcastでは映像による解説をしておりますのでご興味のある方はご視聴ください。
皆さん、こんな経験ありませんか?せっかく作ったデザインに、しょっちゅう修正が入る。または逆に、一発で通ってしまう。この違いは何なのか、考えたことはありますか?
実は、修正が入るパターンと入らないパターンには、明確な特徴の違いがあるんです。その違いこそが、「クライアントの頭の中をどれだけ深く理解しているか」なんです。
私自身、2010年からこの業界に身を置いて、13年以上ウェブの現場で経営者の思考パターンを観察してきました。その経験から言えることは、クライアントの頭の中を理解することが、スムーズなプロジェクト進行の鍵だということです。
ここで、ちょっとした思考実験をしてみましょう。真ん中に丸を描いたとします。この丸を見て、何を想像しますか?
同じ丸を見ても、人によって想起するイメージが全く異なりますよね。これこそが「認識パターン」の違いなんです。
重要なのは、なぜその人がそのように認識したのかを理解することです。例えば:
この認識パターンの違いを理解しておくことで、サイト制作やデザインの際に修正を最小限に抑えることができるんです。
では、どうやってクライアントの認識パターンを理解すればいいのでしょうか?その答えは、意外にも「雑談」にあります。
初回の打ち合わせで行うアイスブレイク。これは単なる場を和ませるためのものではありません。クライアントの認識パターンを理解するための重要な機会なんです。
例えば、私が最近ダンス教室の先生と打ち合わせをした際のエピソードをお話しします。アイスブレイクとして、声優の話をしました。そして、「ダンスは表現力を養うのに最適ですね。子供の頃にダンスを学んでいれば、大人になって声優やミュージカル俳優として活躍できるかもしれませんね」といった話をしたんです。
これは単なる世間話ではありません。ダンス教室の先生がどういう価値観を持っているのか、どういう認識パターンを持っているのかを把握するための戦略的な会話だったんです。
クライアントの認識パターンを理解したら、次はそれを活用したコミュニケーション戦略を立てます。
例えば、クライアントがゴルフ好きだと分かった場合、ゴルフに関連づけて話をすることで、理解が深まります。「ウェブサイトは18ホールのゴルフコースのようなものです。各ページがホールで、ユーザーはそのコースを回遊していきます」といった具合にです。
また、事前にクライアントの情報を調べておくことも大切です。公式サイトやSNSをチェックして、趣味や関心事を把握しておきましょう。そうすることで、より的確なアイスブレイクが可能になります。
私はよく「チャンネル合わせ」という表現を使います。これは、相手の周波数に自分を合わせるということです。
沖縄では、89.1MHzの米軍基地の放送や、87.3MHzのFM沖縄など、様々なラジオ局があります。それぞれの周波数に合わせないと、放送を受信できませんよね。同じように、クライアントの「周波数」に合わせないと、コミュニケーションがうまくいかないんです。
アイスブレイクの際には、クライアントがどの「チャンネル」なのかを見極めるために、いくつかのパターンを用意して確認していきます。これができると、その後の商談や制作プロセスがスムーズに進みます。
では、具体的にどのようにして認識パターンの理解とチャンネル合わせを行えばいいでしょうか?以下のステップを参考にしてください。
Step 1: 事前調査 クライアントの公式サイト、SNS、ニュース記事などをチェックし、基本的な情報を収集します。
Step 2: 仮説立て 収集した情報をもとに、クライアントの認識パターンについていくつかの仮説を立てます。
Step 3: アイスブレイクの準備 仮説に基づいて、複数のアイスブレイクの話題を用意します。
Step 4: 観察と分析 実際のアイスブレイクで、クライアントの反応を注意深く観察し、認識パターンを分析します。
Step 5: チャンネル合わせ 分析結果に基づいて、クライアントの「チャンネル」に合わせたコミュニケーションを行います。
Step 6: フィードバックと調整 プロジェクトの進行中も常にクライアントの反応を観察し、必要に応じてコミュニケーション方法を調整します。
この方法を実践することで、以下のような効果が期待できます:
ただし、この方法にも注意点があります。相手の認識パターンを理解しようとするあまり、押し付けがましくなったり、プライバシーを侵害したりしないよう気をつけましょう。あくまでも自然な会話の中で、相手の考え方や価値観を理解することが大切です。
また、自分自身の引き出しを増やすことも重要です。様々な経営者と雑談する機会を積極的に作り、多様な認識パターンに触れることで、より柔軟なコミュニケーションが可能になります。
クライアントワークにおいて、技術力やデザインスキルはもちろん重要です。しかし、それと同じくらい、いやそれ以上に重要なのが、クライアントの認識パターンを理解し、適切なコミュニケーションを行う能力なんです。
アイスブレイクを単なる世間話と捉えるのではなく、クライアント理解のための重要な機会として活用してください。そして、得られた情報をもとに、クライアントの「チャンネル」に合わせたコミュニケーションを心がけてください。
この方法を実践することで、クライアントとの信頼関係が深まり、プロジェクトの成功確率が飛躍的に高まります。さらには、長期的な取引関係の構築にもつながるでしょう。
フリーランスクリエイターの皆さん、明日からの商談で、ぜひこの「認識パターン理解術」を試してみてください。きっと、これまでとは違った視点でクライアントを見ることができ、より良い成果につながるはずです。
クライアントの頭の中を理解することは、単なるテクニックではありません。相手を深く理解し、最高の成果を提供したいという真摯な姿勢の表れなのです。この姿勢こそが、長期的な信頼関係とビジネスの成功につながるのだと信じています。
皆さんの挑戦を心から応援しています。一緒に、クライアントとの素晴らしい関係を築いていきましょう!