求人広告費をかけても応募ゼロ?ウェブ業界15年のプロが、人材不足に悩む経営者へ「刺さる言葉」の重要性を徹底解説。ターゲットに響くメッセージで採用を成功させる秘訣とは?
この記事は2025年4月17日に Podcast にて配信した音声をベースに作成しています。 ポッドキャストも合わせてお聞きください。
ウェブサイト業界に身を置いて15年。毎年、経営者の皆様のニーズが少しずつ変化しているのを感じています。特にここ数年、顕著なのは採用に関するご相談の増加です。
人材不足に悩む経営者の方々が、様々な求人媒体に広告を掲載し、多額の費用をかけているにも関わらず、全く人が集まらないという状況が後を絶ちません。「一体どうしたものか…」と頭を抱え、採用コンサルタントに相談したり、ウェブサイトや採用サイトのリニューアルを検討されたりする方もいらっしゃいます。そして、最終的に私たちのところに辿り着き、公式サイトのリニューアルや採用サイトの制作をお手伝いさせていただくケースが増えているのです。
しかし、ここで改めて考えてみたいのです。なぜ、求人媒体にたくさんの広告費をかけて露出しても、本当に欲しい人材は集まらないのでしょうか?
結論は、一言。「刺さっていない」からです。
どんなに多くの求人情報を発信しても、その言葉が、本当に欲しい人材、ターゲットとする人材の心に響いていないのです。
例えるなら、私が今日どうしてもパスタを食べたい気分だとします。そんな私に、「ゴーヤチャンプルはいかがですか?」「ゴーヤチャンプル、美味しいですよ!」といくら勧められても、全く心に響きませんよね。なぜなら、あなたの欲求と、提案されたものが完全にズレているからです。
しかし、もし私が「とにかくあの、おばあが作ってくれたような、豆腐がゴツゴツしていて、ゴーヤが肉厚でちょっとフニャッとした、カツオ出汁が効いたゴーヤチャンプルが食べたい!」と思っている時に、まさにそのゴーヤチャンプルのチラシを見たらどうでしょうか?「そうそう、これが食べたかったんだ!」と、心が強く惹かれるはずです。
味噌ラーメンやパン、ピザの情報をいくら見ても、ゴーヤチャンプルが食べたい私の心には響かないのと同じで、あなたが求める特定の人材に、あなたのメッセージが届いていないのです。
だからこそ、最も重要になってくるのは、自社が本当に獲得したい人物像を明確にし、その解像度を高めることです。そして、その人物にどんな言葉をかければ心に響くのか、というメッセージを作り上げることなのです。
これができれば、正直なところ、立派な採用サイトや公式サイトがなくても、求人媒体、例えば私が以前は「おじさんおばさんしか来ないだろう」と思っていたハローワークでさえ、優秀な人材を獲得できるのです。
なぜなら、失業保険をもらいながら新たなスキルを習得しようとしている方や、企業からの内定証明書が必要な方もいらっしゃるため、長く働いていた経験豊富な人材は、意外にもハローワークを窓口として利用することが多いのです。
つまり、「私たちはどんな人材を獲得したいのか」「その人材に対して、どんな価値を提供できるのか」というマッチングする言葉をいかに作り出すかが、非常に重要なポイントなのです。
おかげさまで、私たちがお手伝いさせていただく公式サイトや採用サイトは、公開後すぐに効果が出ることが少なくありません。これは、単に露出が増えただけでなく、これまでターゲットに刺さってこなかったメッセージが、届くようになったからです。
少し余談になりますが、私が沖縄に戻り、子会社に東京の本社から転籍させていただいた際、JTA(日本トランスオーシャン航空)様の公式サイトとリクルートサイトのプロジェクトリーダーとしてお手伝いさせていただきました。
もしお時間があれば、「JTA 公式サイト」で検索してみてください。トップページに、鼻をいじっている私の顔が静止画で出てきます(笑)。動画の中にもエキストラとして出演しています。
当時、私がプロジェクトを推進したのですが、JTA様もリニューアル後すぐに採用で成果が出ていました。あそこのターゲットは、基本的に30代~40代の若手経営者をメインペルソナとして設定していました。出張で飛行機を頻繁に利用する層、そしてリクルートサイトに関しては、目的意識の高い人材をターゲットとしていました。
では、具体的にどのようにして「刺さるメッセージ」を作っていくのでしょうか?
まず、自社の経営理念を改めて整理し、再認識します。
そして、現在働いている社員の方々に、「なぜうちの会社で働いてくれているのか?」「何がきっかけで、多くの会社の中からうちを選んでくれたのか?」という現状調査を行います。
その中には、選ばれた理由、つまりヒントが隠されています。意外なことに、私たち当事者が価値だと思っていたことと、働いている人たちが魅力を感じている点が異なる場合もあるのです。ですから、しっかりとリサーチすることが重要です。
ここで重要なポイントは、今いるような人材を獲得したいのか、それともこれから違う人材を獲得したいのかによって、戦略が変わってくるということです。
まずは、現状の自分たちが大切にしている価値観、アイデンティティと呼ばれるもの(理念や、現在働いている社員の声など)を土台とし、そして未来、2年後、3年後、5年後、10年後、うちの会社がどうなっていきたいのかというビジョンを、解像度高く描きます。
そのビジョンを実現するために必要な人材はどんな人材なのか、というペルソナを具体的に設定します。
そして、そのペルソナの悩みは何か?どんな夢を持っているのか?どんな目的を達成したいのか?どんな人生を送りたいのか?という点を、さらに細かく解像度を高めてイメージするのです。
単にイメージするだけでなく、紙に書き出し、絵を描き、実際にプロフィールを作成することも有効です。
さらに、その方が日常生活でどのような行動パターンをとっているのかを深く考えます。朝起きて最初に何をチェックするのか?普段見ている情報源は何か?雑誌なのか、新聞なのか、インターネットニュースなのか、X(旧Twitter)なのか、Facebookなのか、Instagramなのか、など、人によって行動パターンは異なります。
そして、その獲得したい人材の生活パターンの中に、私たちのメッセージを届けるのです。
ですから、誰に、どんなメッセージを届けたいのかをまず明確にし、その方に対してどんなメッセージを作るのかを考えることが、採用成功の鍵となります。
これができれば、正直なところ、ハローワークでも十分に人が集まります。これは私たちの会社が実際に実行し、結果を出したことです。ハローワークに求人を公開したところ、2週間で5名の方から応募がありました。さらに、X(旧Twitter)に投稿したところ、3名ほどエントリーがありました。合計8名の方に、2週間で応募いただくことができたのです。しかも、かけたお金はほとんどありません。
ただし、メッセージ作成には徹底的にこだわりました。これが、私たちの求人活動で、情報を公開してから短期間で8名もの方に応募いただけた理由です。その8名の中から、現在2名の方と一緒に仕事をさせていただいています。
まず、自分たちの会社の大切なアイデンティティは何か?大切にしている価値観は何か?そして、どんな夢、どんな未来を創りたいのか?これらをしっかりと言語化します。
その言語化したものに対して、どんな人材が必要なのか?今、うちに必要な人材はどういう人材なのか?ということをしっかりと戦略立てます。
私たちの会社で考えたペルソナは2人います。1人は、長く働いてくれる方。マイペースで好奇心旺盛、前向きで明るい方。正直、スキルに関しては、社会人としての基本的なスキルがあれば十分で、ウェブサイト制作やウェブデザインのスキルは必須ではありません。
もう1人は、時短勤務を希望する子育て中の女性です。自分のキャリアを持ちながらも、お子さんの手が少し離れた時間、例えば学校に行っている間などに働きたいという方を想定しました。
そして、その特定した人物に対して、どういう言葉、どういう求人情報を出せば心に刺さるのかを徹底的に考えました。
そうすることで、「ああ、私はこういう生活をしたいんだ」「私はこういうことにチャレンジしたいんだ」というように、メッセージがターゲットに届き、ミスマッチを防ぐことができるのです。実際、応募してくださった8名の方は、本当に素晴らしい方ばかりでした。もし会社の体力があれば、全員採用したかったほどです。
大切なことは、メッセージです。そして、メッセージは人によって刺さるものが異なります。「誰?あなた、あなた、あなたと会いたい。あなたと一緒に仕事をしたい」と、まるで自分のことだと思ってもらえるような、そんなお手紙をいかに作るかが重要なのです。
不特定多数の人たちに向けて情報を発信するのではなく、おばあが作ってくれた、あの肉と島豆腐がゴツゴツしていて、ゴーヤが肉厚で、カツオ出汁が効いたゴーヤチャンプルがまた食べたい!という特定の人に向けて、「おばあのゴーヤチャンプル」というチラシを作れば、その人に必ず刺さるのと同じです。
まずは、誰に対して、どんなメッセージを伝えるのかをしっかりと考える。その上で、その人に届くチャンネルを特定することが重要です。
正直、以前の私は「ハローワークなんて、もう人が集まらないだろう」と決めつけていました。しかし、あるコンサルタントの方に「今、ハローワークが良いんですよ」と言われ、試してみたところ、本当に良い人材が集まったのです。
ですから、どの媒体に出すかというよりも、まずはしっかりと採用戦略を立て、その戦略に基づいてどんなメッセージを発信するのか、どんなストーリーを語るのかを考えてみてはいかがでしょうか。