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営業商談時にストーリーテリングのノウハウを活用する〜本当の敵は何か?

Hiroki Teruya By Hiroki Teruya
営業商談時にストーリーテリングのノウハウを活用する〜本当の敵は何か?

昨日、沖縄県倫理法人会の年度はじめ式に参加して、改めて感じたことがあります。それは、人は役を与えられると自分の才能や能力が発揮でき、かつ成長につながるということです。先輩経営者たちの背中を見て、僕自身も成長していきたいなと思っています。

今日は、この「役割」という観点から、商談時にヴィラン(悪役)を設定することの大切さについて、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

この記事は2024年9月13日にPodcast にて配信した音声をベースに作成したものになります。 ポッドキャストも合わせてお聞きください。

 

ストーリーテリングのノウハウをセールスに活用する方法と効果

 

1.役割の明確化と自己効力感

心理学者アルバート・バンデューラの自己効力感理論によれば、個人は自分の役割や目標が明確に定義されていると、成功への自信が高まり、行動に移す意欲が増します。これは、商談の場面でも同じことが言えるんです。

例えば、クライアントに「あなたの役目は、このヴィラン(課題)を解決することです」と具体的な役割を与えると、クライアントは自分の存在価値を認識し、責任感が高まります。これにより、単に商品やサービスを売るのではなく、顧客の課題を解決するための「導き手」としての役割を担うようになるのです。

2.ヴィラン設定の具体例

では、具体的にどうやってヴィランを設定するのか?いくつかの業種で考えてみます。

税理士事務所の場合

  • クライアント:中小企業向けの税理士事務所
  • ビジョン:「中小企業の成長を財務面からサポートする」
  • ヴィラン:「複雑化する税制」と「経営者の財務への無関心」


説明:
「今、多くの中小企業経営者は複雑化する税制に悩まされ、本来の事業に集中できていません。さらに、財務の重要性を理解していない経営者も多く、これが企業の成長を妨げているんです。この『複雑化する税制』と『経営者の財務への無関心』という二つのヴィランが、中小企業の成長を阻害しているんです。」


解決策:
「私たちの税理士事務所は、単なる税務申告だけでなく、分かりやすい財務教育と戦略的なアドバイスを提供します。これにより、経営者の方々が税制の複雑さに悩まされることなく、財務の重要性を理解し、本来の事業に集中できるようになるんです。つまり、私たちは中小企業の成長を妨げるヴィランを一緒に倒す、経営者の良きパートナーなんです。」


小売店(例:文房具店)の場合

  • クライアント:地域密着型の文房具店
  • ビジョン:「地域の創造性とコミュニケーションを支える」
  • ヴィラン:「デジタル化による文具離れ」と「大型チェーン店の台頭」


説明:
「デジタル化の進展により、人々が文具を使う機会が減っています。また、大型チェーン店の台頭により、個人経営の文具店は価格競争に巻き込まれています。

この『デジタル化による文具離れ』と『大型チェーン店の台頭』という二つのヴィランが、地域の創造性とコミュニケーションを脅かしているんです。」


解決策:
「私たちの文具店は、単に商品を売るだけでなく、文具を通じた創造性の育成やコミュニケーションの促進を目指します。例えば、手書きワークショップの開催や、地域の学校と連携した文具の使い方講座など、文具の魅力を再発見できる機会を提供します。

また、大型チェーン店にはない、地域に根ざしたきめ細かいサービスで差別化を図ります。これにより、デジタル化や大型店の台頭というヴィランに立ち向かい、地域の創造性とコミュニケーションを守る砦となるんです。」


飲食店(例:ラーメン店)の場合

  • クライアント:個人経営のラーメン店
  • ビジョン:「地域の食文化を豊かにし、人々の心を温める」
  • ヴィラン:「画一的な味の大手チェーン店」と「家で食べる簡便化志向」

説明:
「今、街には同じような味の大手チェーン店が増え、個性的な味が失われつつあります。また、忙しさや節約志向から、家で簡単に済ませる人も増えています。

この『画一的な味の大手チェーン店』と『家で食べる簡便化志向』という二つのヴィランが、地域の食文化の豊かさと人々の心の温かさを奪っているんです。」


解決策:
「私たちのラーメン店は、地域の食材を活かした独自の味を追求し、画一的な味に対抗します。また、店内では地域の人々が交流できる場を提供し、単に食事を提供するだけでなく、心の温まる体験を創出します。

さらに、テイクアウトやデリバリーにも力を入れ、家で食べる人にも私たちの味を楽しんでもらえるようにします。これにより、大手チェーン店の画一性や簡便化志向というヴィランに立ち向かい、地域の食文化を守り、人々の心を温める存在になるんです。」


これらの例のように、どんな業種でも「ヴィラン」を設定することで、クライアントの事業に新たな意味付けができ、差別化のポイントを明確にすることができます。重要なのは、クライアントの事業や地域の実情をよく理解し、リアルで共感できるヴィランを設定することです。

3.自己決定理論と内発的動機付けの向上

自己決定理論によると、人は自律性、有能感、関係性という3つの基本的な心理的ニーズが満たされるとき、内発的なモチベーションが高まります。ヴィラン設定は、これらのニーズを満たすのに効果的です。

  • 自律性:導き手としてヴィランを倒す役割を与えられることで、自分の行動が自分の意思で行われているという感覚が生まれます。
  • 有能感:明確な役割(ヴィランを倒す)を持ち、その役割を果たすための能力を認識することで、有能感が高まります。
  • 関係性:顧客を助け、ヴィランを克服することが社会に役立つと感じることで、行動意欲が高まります。

4.ストーリーテリングと役割の力

物語において、主人公が自分の役割や使命を理解することで成長し、問題を克服するという構造は非常に一般的です。

ビジネスの世界でも同様に、役割が明確になると、個人はその役割に対する責任を感じ、自己の才能やスキルをフルに発揮することができるのです。

商談時にヴィランを設定し、クライアントを「導き手」として位置づけることで、単なる取引以上の価値を提供することができます。

これにより、ミッションやビジョンが明確化され、ブランドが顧客との深い関係を築くことが可能になります。

5.注意点とさらなる活用法

ただし、ヴィランの設定には注意も必要です。極端すぎたり、現実離れしすぎたりすると、逆効果になる可能性があります。

あくまでも、クライアントの価値観や目標に基づいた、リアルで共感できるヴィランを設定することが大切です。

ヴィランを設定する際は、クライアントの業界や状況をよく理解していることが前提です。的外れなヴィラン設定は、逆にクライアントの信頼を失うことにもなりかねません。

ヴィランを設定したら、次は「どうやってそのヴィランを倒すのか」という具体的な戦略や方法を提示することが重要です。

問題提起だけでなく、解決策まで一緒に考えていく。これが、真の意味でのコンサルティングやサービス提供になるんです。

6.最後に

この「ヴィラン設定」の手法は、単に商談を成立させるためのテクニックではありません。これは、クライアントの課題や目標をより明確にし、共に解決策を見出していくためのコミュニケーション手法なんです。

クライアントと一緒に「敵」を特定し、それを倒すための戦略を立てる。このプロセスを通じて、クライアントとの信頼関係を深め、より効果的なソリューションを提供することができるんです。

皆さんも、次の商談の時にぜひこの「ヴィラン設定」を試してみてください。きっと、今までとは違った視点でクライアントの課題を捉えることができ、より深い信頼関係を築くことができるはずです。

役割を明確にし、ヴィランを倒す導き手としての使命を持つことで、自分の才能や能力を最大限に発揮できる。そんな可能性を秘めたアプローチ、ぜひ実践してみてくださいね。

今日も一日、がんばっていきましょう!

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