先日、HubSpotのブログ機能にAIによる音声ナレーション読み上げ機能が実装されました。
これは、ブログ記事をAIによって音声ファイルを生成し、記事の中に埋め込む機能です。
海外ではポッドキャストなど音声によるボイスマーケティングがトレンドになりつつあり、日本国内でもこの流れはくると予想されます。
私もポッドキャストを配信し、この声の出し方でいいのか?声の高さは最適なのか?と疑問に思い、最適解を研究中です。
10年前に新規開拓のテレアポをしていた際に、声の出し方を変えたところ、アポがガンガンはいったという成功体験もあります。
今後、AIによる音声生成が普及し、ボイスマーケティングはより一層注目されてくると考えられます。
消費行動のプロセスにおいて、どの周波数で話したほうがいいのかがわかれば、声の出し方が変わってきますね。ここを深掘りしていきたいと思います。
ポッドキャストでは詳細をご紹介しています。
ボイスサーチ対策の必要性
Voicebot.aiによると、2022年時点で年間ボイス検索回数は10億件を超えており、2024年には50%の検索がボイスで行われると予測されています。そのため、ボイスサーチのキーワードを意識したSEO対策が求められるようになっています。
テキストベースのSEOでは、ユーザーが入力するキーワードを意識する必要がありました。一方、音声検索ではユーザーの自然な言葉遣いに合わせた対策が求められます。
テキスト入力の場合は短いキーフレーズが一般的ですが、音声検索ではより長い自然な問いかけ(ロングテールクエリ)が多くなります。
音声検索では位置情報や時間帯などのコンテキスト情報も重要になり、そうした要素を含んだ最適化が必要です。
ポッドキャストは音声コンテンツとしてボイスサーチに有効です。キーワードを意識したタイトル・説明文の最適化が求められます。
また、ポッドキャストの人気上位エピソードがボイスサーチで発見されやすくなる可能性があります。
記事コンテンツに音声読み上げ機能を追加することで、ユーザーに音声体験を提供できます。
これにより音声検索エンジンで発見されやすくなる可能性があります。ただし、自然な音声かつ正確な読み上げが重要です。
さらに音声スニペットの獲得を狙えば、ボイスサーチでの表示が増える可能性があります。
その他の音声検索対策として、以下が挙げられます。
このように、従来のテキストSEOに加え、音声検索の観点からより自然な言語と発話を意識した最適化が重要になってきています。
人間の声が購買行動に影響を与えるという研究結果がいくつかあります。
まず、マーケティング会社Sitecore が実施した調査によると、テキストよりも音声の方がブランドへの信頼性を高める効果があるとされています。調査対象者の半数以上が、音声は親しみやすく信頼しやすいと回答しました。
また、スタンフォード大学の研究では、商品の説明に関して、聞く形式の方が読む形式よりも購買意欲が26%高まることが分かっています。人間の声を聞くことで、より現実味を感じ、製品やサービスへの関与が高まるためだと考えられています。
ハーバード大学の研究でも、製品レビューの音声化がテキストよりも説得力があり、消費者の購買を後押しすることが示されています。人間の声には、感情が込められるため、一方的な情報提供ではなく、対話のような印象を与えるからだと分析されています。
さらに、オハイオ州立大学の研究によれば、製品紹介の動画広告に人間の声を重ねた場合、製品の好印象が向上し、購買意欲にもつながることが実証されています。
このように、人間の声には、テキストや動画とは異なる説得力や信頼性があり、適切に活用することで、マーケティングの効果を高められるという研究知見が複数あります。ボイスマーケティングの重要性を裏付ける根拠になっています。
人間の周波数の比較
動物 | 周波数範囲 |
人間 | 85Hz~255Hz |
犬 | 67Hz~45kHz |
猫 | 55Hz~79kHz |
ウシ | 23Hz~8kHz |
ハト | 50Hz~11.3kHz |
人間の音声周波数は、比較的低い周波数範囲に収まっており、他の動物よりも狭い範囲となっています。この人間の音声周波数は、心理的にも影響を与えることが知られています。
実際に、人間の声の周波数と脳内の神経伝達物質の分泌との関係について、いくつかの研究結果が報告されています。
セロトニン分泌への影響
グラスゴー大学の研究によると、音声の基本周波数が92Hz~123.8Hzの範囲だと、セロトニンの分泌が促進されることがわかっています。セロトニンは幸福感や安らぎをもたらす物質なので、この周波数で話しかけられると心地よく感じられるのだと考えられています。
ドーパミン分泌への影響
また、ノースウェスタン大学の研究では、130Hz前後の周波数の音声を聞くと、ドーパミンの分泌が増加することが示されています。ドーパミンは報酬系のシステムを刺激し、喜びの感情と関係があります。
音程の影響 さらにマギル大学の研究によれば、音程が高くなるほどセロトニン分泌が増え、音程が低くなるとドーパミン分泌が増すことも明らかになっています。
このように、人間の声の周波数は脳内の神経伝達物質に影響を与え、心理状態に作用することがわかってきました。マーケターは、音声コンテンツの制作時にこうした知見を活かすことで、より説得力のある効果的なコミュニケーションができるようになるではないでしょうか。
ポッドキャストで配信する音声の適切な周波数設定について説明します。
ポッドキャストの目的に応じて、リスナーに与えたい心理的影響が異なってくるでしょう。以下、目的別におすすめの周波数設定をご紹介します。
【リラックス効果を狙う場合】
セロトニン分泌を促し、リラックス感や安心感を与えたい場合は、92Hz~123.8Hzの低めの周波数が適しています。具体的には以下の設定がおすすめです。
基本周波数: 115Hz (シ♭近辺)
発声レンジ: 92Hz~130Hz
【モチベーション向上を狙う場合】
ドーパミン分泌を高め、聴取者のやる気を引き出したい場合は、130Hz前後が効果的です。
基本周波数: 135Hz (シ近辺)
発声レンジ: 120Hz~150Hz
【情報伝達を重視する場合】
セロトニン、ドーパミンの影響は最小限に抑え、クリアな情報伝達を心がける場合は、人間の音声範囲の中央付近が適しています。
基本周波数: 185Hz (ファ#近辺)
発声レンジ: 170Hz~220Hz
また、話し手の性別によっても最適な周波数は若干変わってくるかもしれません。男性は全体的に低めの設定、女性は高めが無理のない範囲となります。
消費者の消費行動プロセスにおいて、購買決定に関与する主な脳内の神経伝達物質とその役割は以下の通りです。
ドーパミン
・報酬系の神経回路を活性化し、喜びや満足感をもたらします。
・新しい製品への興味や欲求を引き起こします。
・目的達成時に分泌が高まり、購買意欲を後押しします。
セロトニン
・気分の安定に関与し、不安感を和らげます。
・製品への信頼感や安心感を高める働きがあります。
・分泌が高まると購入に対する抵抗感が低下します。
エンドルフィン
・ストレス解消や快感をもたらす神経伝達物質です。
・ショッピングそのものから得られる喜びを増幅させます。
・高揚感を伴う衝動買いにつながる可能性があります。
ノルアドレナリン
・注意力や興奮度を高める作用があります。
・広告などの外的刺激に対する反応性を高めます。
・製品への関心を引きつける原動力となります。
オキシトシン
・信頼感や絆を生み出す神経ペプチドホルモンです。
・ブランドとの絆や愛着心を高める効果があります。
・継続的な購買行動を後押しすると考えられています。
これらの神経伝達物質がバランス良く作用することで、消費者は製品や購買体験から十分な満足感を得て、実際の購買行動に移行していきます。マーケッターはこれらの役割を理解し、適切な刺激を与えることが重要になります。
マーケティングファネル(購買ファネル)と脳脳神経伝達物質の関係性について紹介します。
まず、このファネルについて解説します。顧客は商品を購入するまでに5つのステップをふんでいきます。
Awareness(認知)
顧客が商品やサービスに気づく段階のことです。
Interest(興味関心)
興味関心をもつ段階のことです。
Consideration(検討)
購入を検討する段階のことです。
Purchase(購入)
商品を購入したりサービスを契約したりする段階のことです。
Loyalty(忠誠)
顧客がリピーターになり、ブランドに対して忠誠心をもつようになる段階のことです。
Purchase Funnel(購買ファネル)
Awareness(認知)
〜ノルアドレナリン〜
視覚的インパクトのある広告や新規性のあるコンテンツでノルアドレナリンの分泌を促します。
Interest(興味関心)
〜ドーパミン〜
製品デモや体験機会の提供、わくわく感のあるストーリーテリングでドーパミンの分泌を促します。
Consideration(検討)
〜セロトニン〜
安心感を与えるユーザーレビューや専門家による公正な比較情報を提供することでセロトニンの分泌を促します。
Purchase(購入)
〜オキシトシン〜
親身なカスタマーサポートや共感を呼ぶブランドメッセージでオキシトシンの分泌を促します。
Loyalty(忠誠)
〜エンドルフィン〜
お得感のあるリピート購入特典 や買い物自体を楽しませるギャンブル要素を提供し、エンドルウィンの分泌を促します。
整理すると
このように、バイヤーズジャーニーの各ステップで異なる神経伝達物質に着目し、適切なマーケティング施策を展開することで、購買意欲を段階的に高めていくことができます。
人間の声、音声によるマーケティングは、感情に働きかける脳の神経伝達物質を理解すると、具体的な施策を考えることができるようになります。
リスナーのマーケティングファネルにおける段階ごとに、適切な周波数で声のトーンや高さを調整すると、感情を動かすことができると思われます。
「声」と「神経伝達物質」に着目してマーケティング戦略を考えると全く違う切り口やアプローチを考えることができるようになると思います。