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沖縄最後の銭湯「中乃湯」に見る4つの価値:コミュニティブランディングの視点

Hiroki Teruya By Hiroki Teruya
沖縄最後の銭湯「中乃湯」に見る4つの価値:コミュニティブランディングの視点

漫画やアニメの世界でしか見たことのない『銭湯』が沖縄にもあるって知っていましたか?

実は沖縄市安慶田に、1960年代から営業を続ける『中乃湯』という銭湯が唯一残っているんです。

 

昨日、家族5人で初めて銭湯に行ってきました。家のお湯(灯油)が切れるというハプニングがあり、急遽訪れることになったのですが、この体験を通して銭湯が持つ4つの重要な役割が見えてきました。それは、マーケティングやブランディングを考える上でも示唆に富む発見でした。

この記事は2025年3月15日にポッドキャストにて配信した音声をベースに作成しました。ポッドキャストも合わせてお聞きください。

 


銭湯に見る4つの役割

銭湯は単なる入浴施設ではなく、以下の4つの側面があることがわかりました。

銭湯の4つの社会的役割

  1. 機能的役割: 基本的な入浴機能、清潔維持、健康促進

  2. 社会的役割: コミュニティ形成、情報交換、人間関係構築

  3. 文化的役割: 伝統継承、地域アイデンティティ形成

  4. 心理的役割: 孤独感緩和、帰属意識の醸成

これらの視点から、『中乃湯』の体験を紹介しながら、現代のビジネスやブランディングへの示唆を考えてみましょう。


機能的役割:基本を押さえた上での独自性

銭湯の基本機能は『体を清潔にする場所』ですが、『中乃湯』にはシャワーがなく、蛇口が10箇所ほど設置されています。面白いのが、左側には赤字で『湯』、右側には青字で『水』と書かれており、自分で調整してお湯を出す仕組みになっています。

この水は井戸水を汲み上げて温めたもので、少しぬるっとしたミネラル感のある肌に良さそうな水質でした。これが他の入浴施設にはない独特な体験となっています。

マーケティングの視点: 一見「不便」に思える仕組みが、実は現代にはない「体験価値」を生み出しています。これは、基本機能を押さえた上で、あえて効率化しない部分を残すことで差別化につながるという、ビジネスにも応用できる戦略です。


社会的役割:自然な交流を生み出す場

『中乃湯』で最も印象的だったのは、コミュニティとしての機能です。例えば、会計をしてくれたのが常連の女性の方だったんです。お客さんが自然とお店を手伝う関係性があることで、ここが単なる商業施設ではないことを感じました。

また、浴場ではおじさんたちが裸でおしゃべりしていたり、昔ながらの『裸の付き合い』が今も続いていることに気づきました。

マーケティングの視点: 優れたブランドやビジネスは、単にサービスを提供するだけでなく、ユーザー同士がつながれる『場』を創出しています。Apple Storeやスターバックスのようなサードプレイスの概念も、銭湯が長年実践してきたコミュニティ形成と本質的に同じです。


文化的役割:地域の記憶と伝統を守る

『中乃湯』は1960年から続く歴史ある銭湯で、沖縄で唯一現存する施設です。店内には新聞掲載された記事や、オーナーの『シゲちゃん』の写真が飾られており、地域のアイコン的存在になっています。

また、銭湯の価格設定も文化的な意味を持っています。大人370円、小学生170円、幼児100円と非常に安価ですが、これは沖縄県が定めた基準によるものです。一方、スーパー銭湯などは施設ごとに自由に価格設定できる特殊公衆浴場として運営されています。

マーケティングの視点: 伝統や歴史を持つブランドには、その「ストーリー」自体が大きな価値となります。地域や文化との関わりを伝えることで、他にはない独自の魅力を作り出せます。


心理的役割:安心感と帰属意識を育む

最初は『汚いのでは?』という偏見があったのですが、実際はとても清潔で、逆にレトロな雰囲気が心地よく感じました。

また、沖縄では昔、頻繁に断水があったため、銭湯は重要なインフラの一部でした。現在も、ボイラーが壊れた家庭や常連客が訪れる場所として機能しており、コミュニティの拠点になっています。

マーケティングの視点: 優れたブランドは、単に機能的なニーズだけでなく、心理的な安心感や帰属意識も提供します。『困った時に頼れる』というブランド体験は、顧客との深い絆を形成するのに非常に効果的です。


現代社会における銭湯の価値再考

全国的に銭湯の数は1960年代をピークに10分の1まで減少しています。その主な理由として、

  • 各家庭に浴室が普及
  • 経営者の高齢化と後継者不足
  • 施設の老朽化と維持費の高騰
  • エネルギーコストの上昇
  • 消費者のライフスタイルの変化

が挙げられます。

しかし、デジタル化が進み孤独感が深まる現代にこそ、銭湯のようなリアルな交流の場が求められているのではないでしょうか。


体験から学んだこと

この体験を通して、マーケティングやブランディングにおいて重要な示唆を得ました。

  1. 体験を通じた価値発見: 頭で考えるだけでなく、実際に体験することで見えてくる価値がある

  2. 多面的な価値提供: 機能的・社会的・文化的・心理的の4つの視点を持つ

  3. 伝統と革新の融合: 古いものを現代的文脈で再価値化する

  4. コミュニティ形成の場: 人と人をつなぐブランドの力

あなたも食わず嫌いをやめて、新しい体験をしてみませんか? 沖縄市安慶田の『中乃湯』、ぜひ訪れてみてください!

 

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