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オンラインコースのカリキュラムに有効な3つの学習モデルとは?

Hiroki Teruya By Hiroki Teruya
オンラインコースのカリキュラムに有効な3つの学習モデルとは?

オンライン教育の普及に伴い、効果的なカリキュラム設計の重要性がますます高まっています。本記事では、オンラインコースのカリキュラム作成に特に有効な3つの学習モデルについて詳しく解説します。

これらのモデルを理解し、適切に適用することで、より効果的で魅力的なオンラインコースを構築することができるようになります。

この記事は2024年7月28日にポッドキャストにて配信した音声を記事化したものになります。ポッドキャストも合わせてお聞きください。

 

1. ADDIEモデル

ADDIEモデルは、教育設計の基本的なフレームワークとして広く知られています。この名称は、モデルの5つの主要段階の頭文字を取ったものです。分析(Analysis)、設計(Design)、開発(Development)、実施(Implementation)、評価(Evaluation)。

ADDIE モデル 分析 設計 開発 実施 評価

ADDIEモデルの各段階

  1. 分析(Analysis)
    • 学習者のニーズ、既存の知識レベル、学習目標を特定します。
    • コースの対象者や学習環境を分析します。
  2. 設計(Design)
    • 学習目標に基づいてコース構造を計画します。
    • 適切な教材、評価方法、学習活動を選択します。
  3. 開発(Development)
    • 実際のコンテンツ(動画、テキスト、クイズなど)を作成します。
    • 学習管理システム(LMS)上にコースを構築します。
  4. 実施(Implementation)
    • 開発したコースを学習者に提供します。
    • 必要に応じてサポートやガイダンスを提供します。
  5. 評価(Evaluation)
    • 学習者の進捗と成果を測定します。
    • フィードバックを収集し、コースの改善点を特定します。

オンラインコースへの適用

ADDIEモデルは、体系的なアプローチを提供するため、オンラインコースの開発に特に適しています。

例えば、分析段階では、オンライン学習者の特性(自己管理能力、技術的スキルなど)を考慮に入れることができます。

設計段階では、インタラクティブな要素やマルチメディアコンテンツの活用を計画できます。評価段階では、オンラインツールを使用して即時フィードバックを収集し、コースを迅速に改善することができます。

2. ブルームの教育目標分類学

ブルームの教育目標分類学は、1956年にベンジャミン・ブルームとその同僚によって開発された教育理論です。この分類学は、学習目標を3つの主要な領域(ドメイン)に分類しています。認知的領域、情意的領域、精神運動的領域。各領域について詳しく解説します。

ブルームの教育目標分類学 認知的領域 1. 記憶する 2. 理解する 3. 適用する 4. 分析する 5. 評価する 6. 創造する 情意的領域 1. 受け入れる 2. 反応する 3. 価値づける 4. 組織化する 5. 人格化する 精神運動的領域 1. 知覚 2. 準備 3. 誘導反応 4. 機械的反応 5. 複雑な反応 6. 適応 7. 創造

医療系・福祉系の実務的なレッスンを含むオンラインコースでは、ブルームの教育目標分類学の3つの領域のうち、特に認知的領域と精神運動的領域が重要です。

1. 認知的領域(Cognitive Domain)

認知的領域は、知識の獲得と知的スキルの発達に関するものです。この領域は、2001年にアンダーソンとクラスウォールによって改訂され、以下の6つのレベルに分類されています。(低次から高次の思考スキルの順)

  1. 記憶する(Remember)
    • 定義:事実、用語、基本的概念、答えを想起する能力。
    • 動詞例:定義する、列挙する、名前を挙げる、識別する。
  2. 理解する(Understand)
    • 定義:アイデアや概念を説明する能力。
    • 動詞例:説明する、要約する、言い換える、例を挙げる。
  3. 適用する(Apply)
    • 定義:情報を新しい状況で使用する能力。
    • 動詞例:実行する、実施する、解決する、使用する。
  4. 分析する(Analyze)
    • 定義:情報を部分に分解し、関係性を理解する能力。
    • 動詞例:比較する、対比する、区別する、検査する。
  5. 評価する(Evaluate)
    • 定義:正当化された結論を下す能力。
    • 動詞例:判断する、批評する、正当化する、推奨する。
  6. 創造する(Create)
    • 定義:要素を組み合わせて新しいものを作る能力。
    • 動詞例:設計する、構築する、生成する、計画する。

認知的領域の重要性

認知的領域は、医療・福祉の専門知識の習得と応用に直接関わるため、非常に重要です。

理由

  1. 医療・福祉の分野では、正確な知識と理解が患者・利用者の安全と適切なケアに直結します。
  2. 複雑な症例や状況に対応するために、高次の思考スキル(分析、評価、創造)が必要です。
  3. 常に進化する医療技術や福祉制度に対応するため、継続的な学習と知識の更新が求められます。

2. 情意的領域(Affective Domain)

情意的領域は、感情、態度、価値観の発達に関するものです。この領域は以下の5つのレベルに分類されます。

  1. 受け入れる(Receiving)
    • 定義:刺激や現象に注意を払う意欲。
    • 例:講義に注意を向ける、他者の意見を聞く。
  2. 反応する(Responding)
    • 定義:積極的に参加し、反応する。
    • 例:ディスカッションに参加する、ボランティア活動に参加する。
  3. 価値づける(Valuing)
    • 定義:特定の考えや行動に価値を見出す。
    • 例:多様性の重要性を認識する、環境保護の重要性を理解する。
  4. 組織化する(Organizing)
    • 定義:異なる価値観を比較し、整理する。
    • 例:個人的な価値観の体系を構築する、倫理的な判断基準を発展させる。
  5. 人格化する(Characterizing)
    • 定義:一貫した価値観体系を持ち、それに基づいて行動する。
    • 例:持続可能な生活様式を採用する、職業倫理を日常的に実践する。

情意的領域の重要性

精神運動的領域は、医療・福祉の実践的スキルに直接関わるため、実務的なレッスンには不可欠です。

理由

  1. 医療・福祉の多くの職務は、特定の身体的スキルや技術の習得を必要とします(例:注射、包帯交換、介助技術)。
  2. 患者・利用者の安全と快適さは、適切な技術の実行に大きく依存します。
  3. 緊急時や困難な状況下でも、確実にスキルを実行できる能力が求められます。

3. 精神運動的領域(Psychomotor Domain)

精神運動的領域は、身体的スキルの発達に関するものです。この領域は以下の7つのレベルに分類されます。

  1. 知覚(Perception)
    • 定義:感覚器官を使用して環境を認識する能力。
    • 例:視覚的な手がかりを認識する、音の違いを聞き分ける。
  2. 準備(Set)
    • 定義:行動を起こす準備をする。
    • 例:指示に従う姿勢を取る、安全手順を確認する。
  3. 誘導反応(Guided Response)
    • 定義:指示や模倣を通じて新しいスキルを学ぶ初期段階。
    • 例:教師の動きを真似る、基本的な手順を踏む。
  4. 機械的反応(Mechanism)
    • 定義:学んだスキルが習慣となる段階。
    • 例:タイピングを自信を持って行う、楽器を基本的に演奏する。
  5. 複雑な反応(Complex Overt Response)
    • 定義:複雑な動作を正確にスムーズに実行する能力。
    • 例:高度な手術技術を実演する、プロレベルのスポーツ技能を示す。
  6. 適応(Adaptation)
    • 定義:学んだスキルを新しい状況に合わせて修正する能力。
    • 例:新しい料理技術を既存のレシピに適用する、スポーツ戦略を試合状況に応じて調整する。
  7. 創造(Origination)
    • 定義:新しい動作パターンを創造する能力。
    • 例:新しいダンスの振り付けを創作する、革新的な手術技術を開発する。

これらの3つの領域を理解し、適切に活用することで、より包括的で効果的な学習目標を設定し、学習者の全人的な成長を促すことができます。

オンラインコースの設計においても、これらの領域をバランスよく取り入れることで、より豊かな学習体験を提供することが可能になります。

医療系・福祉系のオンラインコースでは、認知的領域と精神運動的領域に重点を置きつつ、情意的領域も適切に組み込むことで、総合的な専門能力の開発が可能になります。

実務的なレッスンでは特に、知識の応用(認知的領域)と技術の実践(精神運動的領域)を密接に結びつけることが重要です。

オンライン環境の制約を考慮しつつ、インタラクティブな教材、シミュレーション、VR技術などを活用することで、効果的な実務教育を提供することができます。

また、実際の臨床実習やハンズオントレーニングと組み合わせたブレンド型学習アプローチも、より完全な学習体験を提供する上で有効です。

 

3. ガニエの9教授事象

ロバート・ガニエによって提唱されたこのモデルは、効果的な学習のための9つのステップを示しています。これらの事象は、学習者の注意を引き、情報を効果的に処理し、長期記憶に転送するのを助けます。

ガニエの 9教授事象 1. 注意 2. 目標 3. 既習 4. 新事項 5. 指針 6. 練習 7. FB 8. 評価 9. 転移

ガニエの9教授事象

  1. 注意を獲得する:学習者の興味を引き、準備態勢を整える。
  2. 学習目標を知らせる:期待される学習成果を明確に伝える。
  3. 前提条件を思い出させる:関連する既存知識を活性化させる。
  4. 新しい情報を提示する:新しい学習内容を提供する。
  5. 学習の指針を与える:情報の処理と理解を支援する。
  6. 練習の機会を与える:学んだことを適用する機会を提供する。
  7. フィードバックを与える:パフォーマンスに関する情報を提供する。
  8. 学習の成果を評価する:学習目標の達成度を測定する。
  9. 保持と転移を高める:学んだことを異なる状況に適用できるようにする。

オンラインコースへの適用

ガニエの9教授事象は、オンラインコースの各レッスンやモジュールの構造化に非常に有効です。

  1. 注意を獲得する:興味深い動画や問いかけでレッスンを開始。
  2. 学習目標を知らせる:各モジュールの冒頭で明確な目標を提示。
  3. 前提条件を思い出させる:前回の内容の簡単な復習や関連するクイズを含める。
  4. 新しい情報を提示する:動画講義、インタラクティブなプレゼンテーションなどで新しい内容を紹介。
  5. 学習の指針を与える:ステップバイステップのガイド、例示、ヒントを提供。
  6. 練習の機会を与える:インタラクティブな演習、シミュレーション、課題を設定。
  7. フィードバックを与える:自動採点クイズ、詳細な解説、個別フィードバックを提供。
  8. 学習の成果を評価する:総括的評価、プロジェクト課題、試験を実施。
  9. 保持と転移を高める:実世界の応用例の提示、リフレクション活動の実施。

 

まとめ

ADDIEモデル、ブルームの教育目標分類学、ガニエの9教授事象は、それぞれ異なる視点からオンラインコースのカリキュラム設計をサポートします。

ADDIEモデルは全体的な開発プロセスを提供し、ブルームの分類学は学習目標の設定と評価を助け、ガニエの9教授事象は個々のレッスンの構造化に役立ちます。

これらのモデルを適切に組み合わせることで、体系的で効果的、かつ学習者中心のオンラインコースを作成することができます。ただし、各モデルを硬直的に適用するのではなく、対象となる学習者のニーズや学習内容の特性に応じて柔軟に適用することが重要です。

最後に、テクノロジーの進化や学習科学の新しい知見を常に取り入れ、これらのモデルを現代的なコンテキストで解釈し適用していくことで、より魅力的で効果的なオンライン学習体験を創出することができます。

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